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尿酸値14.8でも痛風にならない「プレミアムな患者」が医師から頼まれたこととは──

2021年10月3日(日)13時30分
樋口真嗣(映画監督) *PRESIDENT Onlineからの転載

それまでの担当医は、私という、一人ビッグデータを手に入れたので、手塩にかけて育てたいという思いがあったのではないかと思うんです。だから、きつくあたられることはなかった。私が逃げ出さないように腐心していたのかもしれません。

でも、その女医さんは、きっと自分の研究とは関係ないわけですから、あまりにも自堕落な数値をみて「なにこれ」と怒るわけです。

女医の態度に変なスイッチが入りかけた

人間は50年も生きると、誰かに怒られることはほとんどなくなるんですね。宴席なんかでは「よっ、監督っ!」なんてちやほやされることも多い。それが説教をされ頭を下げるような目にあうわけですよ。

最初は衝撃ですよ、もう。

でも少し時間が経つと、じわじわくると。そしてまた厳しい言葉で殴って欲しくなる。

books20211001.jpg定期検診の3カ月が待ち遠しくてね。「もっと数値を悪くしたら怒られるかな」なんて思いながらも、やっぱり褒められたいから食事に気をつける。改善された数値を見た先生は、「やればできるじゃない」って。怒られるのもいいけど、褒められるのもいいななんて思うわけです。

そして、何度か診察を受けるうち、「仕事は忙しいんですか?」ってきかれまして「実はこれこれこういう仕事をしてて」といったら。「あの映画もそうでしたよね」と作品名をつらつらと並べて、しかもみんなが知っているわけでもないタイトルも入ってたりして、なんだ、俺のこと知ってたのかって! 彼女は私の作品は全部見てるようなありがたい、結構な位の高いお客様だったんです。

そこで私ははたと気づくんですね。

私に対する「君」という呼称は、別に理系でもドSでもなくて、いわゆる「こっち側」の喋り方だったんだと。それを知ってますますキュンとするじゃないですか!

痛風がくれた出会いに感謝ですね。ときめきと健康をありがとう。

樋口真嗣(ひぐち・しんじ)

映画監督
1965年生まれ。東京都新宿区出身。特技監督・映画監督・映像作家・装幀家。1984年『ゴジラ』にて映画界入り。1995年『ガメラ 大怪獣空中決戦』で特技監督を務め、第19回日本アカデミー賞特別賞を受賞。他に、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズなど数多くのヒット映画作品に画コンテやイメージボードとして参加。主な監督作品は『ローレライ』『日本沈没』『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務め、第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞。近年公開予定の『シン・ウルトラマン』では総監督を務める。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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