【追悼】チャーリー・ワッツのようにドラムを叩ける者は、もう現れない
Death of a Drummer Legend
ストーンズを論じる際には、どんな形でも『メイン・ストリートのならず者』に触れずに済ますことはできない。もはや伝説と化したこの作品は、自らの重みに圧倒されるリスクと時に隣り合わせだ。
本作がストーンズの最高傑作か、断言はできない。だが間違いなく、最もストーンズらしい作品であり、ワッツの最高のプレーをいくつも収めたアルバムでもある。
いい例が「ダイスをころがせ」だ。銃を突き付けられて、ストーンズが収録した曲のベストを選べと迫られたら、たぶん筆者はこれを選ぶ。
最高級のソウルミュージックである「ダイスをころがせ」は、ストーンズがかつて崇拝していたものの全てに、自らなり遂げたことを実感できる作品の1つだ。
何もかもが粗削りで、非の打ちどころがない。曲自体もパフォーマンスも、アレンジもミックスも、ボーカルの掛け合いもバックコーラスも、そしてもちろん、われらがドラマーも......。
同曲のあまりに美しいワッツのドラミングに、涙ぐんだことは1度だけではない。音が漂い、踊り、豊穣で敏感で、優雅で厳然として、あり得ないほどリラックスしている。こんな演奏スタイルは習得できるものではない。持って生まれるしかないのだ。
チャーリー・ワッツ、遠い昔に完璧だったバンドの完璧なドラマー。彼のようにドラムをたたける者は、これからも現れない。
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