アメリカ極右が愛するダークヒーローとは? 勝手なイメージ利用に不快感
The Punisher Goes Rogue
PR上の問題もある。ニューヨーク大学法科大学院イノベーション法律・政策センターのジーン・フロマー共同所長は、ブランド側は「消費者を敵に回したがらないことが多い」と語る。「だから法的措置を取るかどうかは、PR上のプラスマイナスを計算した上での判断になる」
また、議事堂襲撃事件の暴徒たちが公式ライセンス商品を着用していたら、たとえブランドイメージが悪化したとしても、マーベルには法的措置を取る根拠がない。
極右団体の「制服」に?
アパレルメーカーのフレッドペリーも、同じような問題に直面している。襲撃に参加した極右組織プラウド・ボーイズが、フレッドペリーの黒地に黄色いラインの入ったポロシャツを非公式の「制服」に採用したのだ。トレードマークのローレルリースを勝手にアレンジしたロゴ入りだ。
フレッドペリーは昨年9月、黒地に黄色いライン入りのポロシャツの販売を打ち切り、「プラウド・ボーイズは全く無関係の団体だ」と声明を出した。
マーベルは、そこまでやる意欲は示していない。それにパニッシャーを葬っても、どくろマークの不正使用は止まらない可能性がある。真の問題は、パニッシャーはゆがんだ正義の味方なのか、ファシスト的な殺し屋なのかが明確でないことかもしれない。
コンウェイがパニッシャーというキャラクターを発案したのは1970年代初頭のこと。最初はスパイダーマンの脇役だった。
ベトナム戦争の影を引きずる当時のアメリカでは、都市犯罪が増加し、政府は国民からの信頼を失い、『ダーティハリー』や『狼よさらば』といった暴力的な復讐を描いた映画が大ヒットしていた。「社会の統制が失われたという感覚」や「公的機関が果たせなくなった役割を担い、秩序を取り戻す私刑執行人の到来」への期待から生まれたパニッシャーは「世相を映す鏡」だったと、コンウェイは言う。
後年、コンウェイはパニッシャーのイメージが独り歩きを始めていることに気が付いた。アメリカの海兵隊員がパニッシャーのどくろのロゴを制服に着けているのをイラクの兵士たちが見て、それをまねているという記事を読んだ時だった。