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ジョンのレガシー

ジョン・レノンを国外追放の危機から救った最強の弁護士【没後40年特集より】

2020年12月23日(水)17時00分
リオン・ワイルズ(弁護士)

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ジョンとヨーコの弁護を引き受けたワイルズ

「もう一点、有能な刑事弁護士がなぜ有罪の供述を勧めたのか、私には理解できない。そんな有罪判決の正当性は、わが国の司法制度では認められない可能性がある。そこにいくらかの希望があるのではないかと私は思う」

ヨーコが身を乗り出して、「そういう議論、どこでどう持ち出すの?」と聞いてきた。

「チェスみたいなものですから、手順というものがあります。まずは永住権を申請していただきます」と言って私は法令集をめくり、ある一節を指さした。「芸術と科学の分野において傑出した人物」に関する特例を述べた箇所だ。

説明を聞くにつれて、ヨーコの顔が明るくなっていくのが分かった。ジョンは椅子に身を沈めてお茶を飲み干した。どちらも満足そうだ。無言で視線を交わしてから私のほうを向き、ヨーコが言った。「力を貸してください。ご自宅の電話番号を教えていただけます?」

グリニッチビレッジでタクシーを拾い、クイーンズ区の自宅に戻る車中で、私は今日の長い議論を整理してみた。そして思った。これで妻にいい土産話ができたぞ。

「それで、わざわざ出向いていかなきゃならない『大物』って誰だったの?」。帰宅して寝室に向かう私に妻が声を掛けた。

「ああ......」。私は必死で記憶を巻き戻した。「たしか、ジャック・レモンとヨーコ・モトだ」

妻が私をにらんだ。「待って。それってジョン・レノンとヨーコ・オノじゃないの?」

「ああ、そうかな」

「いやだ、リオンったら! あなた、別世界に住んでるの? 本当に誰だか知らなかったの? ジョンとヨーコ! あの2人、世界中の誰よりも有名なのよ」

言うまでもないが、それから私はこの新しいクライアントについてたくさん学ぶことになった。

<2020年12月15日号掲載>

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12月15日号(12月8日発売)は「ジョンのレガシー」特集。悲劇の死から40年。「20世紀のアイコン」が残した音楽・言葉・思想。[独自]暗殺直前インタビュー収録

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