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ジョン・レノンを国外追放の危機から救った最強の弁護士【没後40年特集より】

2020年12月23日(水)17時00分
リオン・ワイルズ(弁護士)

ふとひらめいて、私は尋ねた。「お二人はこの国に永住したい?」

ジョンとヨーコは肩を落とした。「したくても無理でしょ」とジョンが答えた。「弁護士さんならお分かりですよね?」

全ての情報を聞くまでは何も言いたくなかったが、このとき既に勝利への戦略が浮かんでいた。

「それで、先生」とジョンが言った。「2人の貧乏アーティストにどんなアドバイスを?」

ヨーコは椅子に座り、ジョンは身を乗り出した。

「娘さんを見つけ、法廷で親権を認めさせるために何カ月か滞在を延ばせばいいのなら、それは簡単です」と私は答えた。「ジョンの犯歴を問題にしないという従来の判断を延長させるのも難しくない。数カ月でいいなら、ここにいるアランが確実に在留資格を延長してくれます。彼が作成した書類を見ましたが、私にもあれ以上の書類は作れません」

ジョンとヨーコは沈黙した。数カ月以上の滞在を望んでいるのは明らかだった。「しかしながら」と私は続けた。「永住を希望されるなら、別の提案があります」

妻があきれた「土産話」

私は移民関連の法令集を取り出して該当箇所を開き、大きな声で読み上げた。「麻薬またはマリフアナの所持に関する法令に違反し、有罪判決を受けた者」はアメリカ合衆国から追放できる......。

「法律の文言は、全て厳格に解釈されるべきです。この法律の場合、『またはマリフアナ』という文言はカリフォルニアでの2件の判例を受けて追加されました。マリフアナ所持で有罪判決を受けた被告が、マリフアナは『麻薬』ではないと主張して控訴し、法廷がそれを認めた事例です。マリフアナは麻薬じゃなく、幻覚剤とされてますからね」

「そうであれば、こうも言えます。(麻薬でもマリフアナでもない)ハシシ所持を理由とする犯歴は、当該人物をアメリカから永遠に締め出す根拠にはならないと」

聞いていたアランと彼のボスが目の色を変えた。

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