ジョン・レノンを国外追放の危機から救った最強の弁護士【没後40年特集より】
聞いているヨーコは今にも爆発しそうだった。
礼儀として、私は自分の意見を言う前に質問した。「その有罪というのは、裁判で争った結果で?」
「いや、でも弁護士に有罪を認めたほうがいいと言われた」とジョン。
「本当に罪はあった?」
ジョンは言った。「いや、全く無罪だ。もちろん、ハシシやその他のドラッグに手を出したことがないとは言わない。でも当時は警察の手入れがあると警告されていた。ロンドン警視庁の麻薬捜査班がロックミュージシャンたちに目を付けていて、私もその1人だった。既にミック(ミック・ジャガーのことだと後になって知った)やジョージ(・ハリスン)は逮捕されていたしね」
ジョンが続けた。「当時のアパートは別のミュージシャン数人から受け継いだんだ。あの頃の私たちはドラッグなんてやっていない。マクロビオティック(自然食健康法)の生活をしていたからね。ドラッグがあったら困るので隅々まで掃除したくらいだ」
私は身を乗り出した。「それでも弁護士は有罪を認めろと?」
「ま、いろいろ事情があって。ヨーコは、いわゆる敵国人だし」。ジョンは鼻にしわを寄せ、イギリスの役人の口ぶりをまねて「敵国人」と発音し、にやりとした。「それに、たいした影響はないと言われたから。前科もないし、形ばかりの罰金を払えば終わりだと。だから言われたとおり有罪を認めた。弁護士に任せればいい、はずでしょ?」
「そのとき何を所持していたのですか?」。私は判決資料をめくりながら尋ねた。「マリフアナ?」
「いや、ハシシです」
「私の無知を許していただきたい。私はあなたのことも知らないし、マリフアナとハシシの違いも分からない。それらは同じものですか?」
「ハシシはマリフアナよりずっと上です!」とジョンは言い、教師が黒板に板書をするふりをした。「いいですか。ハシシとハッパ──ハッパはマリフアナのことです──は同じ植物から作られますが、ハシシのほうがはるかに強力。お遊びのドラッグじゃないんです」