ジョン・レノンを国外追放の危機から救った最強の弁護士【没後40年特集より】
「ジョンはすぐに来ます」とヨーコは言った。
「先に、いくつかの点をお知らせしますね。問題は、彼にドラッグ絡みの有罪歴があることです。でも彼は頻繁にアメリカに来る必要がある。仕事の契約とか、レコードや印税とかの話があるから......。それから私たちには娘がいます。私が前の結婚で儲けた子で、キョーコといいます。娘の父は『有名人のジョンとヨーコ』に娘を奪われると思い込んでいて、話にならない。ずっと私たちを避けていたので、ヨーロッパ中を探し回りました」
ヨーコはずっと私の顔を見つめていた。私が彼女の境遇に同情しているかどうか、確かめるためだ。
ジョンは怒った主婦のように
夫の在留資格や自分の悩みに関わる法的問題に、ヨーコは精通していた。
「私たちは米国政府の政策、とりわけベトナム戦争には批判的なので、政権から煙たがられています。滞在延長の申請が却下されたら、私たちは困ってしまう」彼女は前かがみになり、懇願するように手を差し出した。「いざとなれば、彼らは私のパフォーマンスを口実にするかもしれない。私がやるのはコンセプチュアルアートで、やり方が普通じゃない。ここのフィルハーモニックを聴きに行って、そのとき座席で立ち上がって、楽団を指揮したんです。お金はもらってないし、たいていの人はパフォーマンスと認めないでしょうけど、これは私にしかできないアートなんです」
自分はジョンの妻である以前に1人の芸術家だと、ヨーコは言いたかったのだろう。アランはしきりにうなずいていたが、彼のボスのクラインはまるで無関心で、相変わらず彼女を見ようともしない。
すると奥の部屋から、茶色の髪をほとんど肩まで垂らした細身の若者が姿を現した。ジョン・レノンだ。その笑顔は気さくで尊大さのかけらもなく、私に握手を求めてきた。
「あなたが入管法に強い弁護士さんですね、こんにちは」それから、来客に何も出していない亭主に腹を立てた主婦のように、「お茶を入れますね」と言った。彼はキッチンに行き、やかんを火にかけ、戻ってきて私に尋ねた。「私たち、ずっとここにいられますか、キョーコが見つかるまで?」
そこでクラインが口を挟んだ。ジョンがアメリカに来るときはいつも自分が代理人を務めてきた、議会にも働き掛け、彼のマリフアナ所持の有罪歴が問題にならないようにしてきたんだ......。