最新記事

ジョンのレガシー

ジョン・レノンが暗殺の直前に語った家族と反戦とビートルズ【没後40周年特集より】

2020年12月23日(水)11時00分
本誌米国版編集部

――今のあなたは「女は控えめなほうがいい」と言った23歳の頃とは違う。何があなたを変えたのか?

ジョン 僕は強がりの労働者階級の男で、かしずかれるのに慣れていた。ヨーコはそんなのには反対だった。彼女は最初から平等を求めた。僕は「僕を変えようとするな。僕のスペースに侵入しないでくれ」と言い張った。彼女は「それじゃ私はここにはいられない。何もかもあなたを中心に回っている。私はそんなところじゃ息ができない」と答えた。それを教えてくれた彼女に感謝している。

――ヨーコがあなたをバンドから引き離したという人もいる。本当のところは?

ジョン 67年に映画『ジョン・レノンの僕の戦争』を撮ってから、ずっとビートルズを抜ける理由を探していた。その気持ちは、ビートルズがツアーをやめたときから芽生えていた。でも、王宮から出ていくことが怖かったんだ。プレスリーはそれで命を落とした。王様は決まって忠臣に殺されることになっている。王様はあまりに多くを与えられ、甘やかされ、飲み過ぎる。全ては王様を玉座にとどまらせるためだ。そういう立場に置かれた人は、自分では何も気付かない。でも僕の場合は、ヨーコが気付かせてくれた。「ビートルズのエルビス」になることがどういうことか、現状維持だけを求める忠臣どもに囲まれているのはどういうことか。死と同じだ。ビートルズはそんなふうにして終わった。彼女がビートルズを「分断」したのではない。彼女は僕に、「あなたは裸の王様よ」と教えただけだ。

――70年代初めに、政治的に急進的な行動に出たことをどう振り返る?

ジョン あんな急進主義は偽物だ。なぜって、罪悪感からしでかしたものだからさ。お金を稼ぐことにいつも罪悪感があった。だから誰かにあげるか、失うことにした。偽善者というわけじゃない。何かを信じるときは(物事の)根っこの根っこまで信じるたちなんだ。だけどカメレオンだったので、周りにいる人と同じになってしまう。ちょっと立ち止まって考えれば(アメリカの左翼活動家だった)ジェリー・ルービンがやりたいことをできないでいるからといって、僕がアメリカ政府を相手に闘うなんて、全く何をやっていたんだか。彼は楽をしたかっただけだ。

――昔を懐かしむことは?

ジョン ないね! ビートルズをビートルズたらしめていたものがなんであれ、それが60年代を60年代たらしめていた。もしもジョンとポール、ジョージとリンゴが一緒になれば「ビートルズ」ができると考える人がいるなら、頭がどうかしている。ビートルズは等身大以上のことをやってのけた。どれだけ4人が望んでも、かつてのようなグループに戻ることは決してないね。僕とポールがまた組めばどうなるかって? 退屈だろうな。ジョージとリンゴはどうでもいい。曲を作っていたのは僕とポールなんだから。分かる?

ビートルズの曲の中にはもう一回作り直したい曲がたくさんある。僕が考えていた仕上がりと全然違うからね。だけど、ビートルズに戻るっていうのは、もう一度学校に行くようなもの......。同窓会に行くガラじゃないから。もう終わったんだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月住宅着工戸数は前年比マイナス2.5%、8カ月

ビジネス

みずほ証の10ー12月期、純利益は4.4倍 債券や

ビジネス

アングル:中銀デジタル通貨、トランプ氏禁止令で中国

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中