ジョン・レノンが暗殺の直前に語った家族と反戦とビートルズ【没後40周年特集より】
――今のあなたは「女は控えめなほうがいい」と言った23歳の頃とは違う。何があなたを変えたのか?
ジョン 僕は強がりの労働者階級の男で、かしずかれるのに慣れていた。ヨーコはそんなのには反対だった。彼女は最初から平等を求めた。僕は「僕を変えようとするな。僕のスペースに侵入しないでくれ」と言い張った。彼女は「それじゃ私はここにはいられない。何もかもあなたを中心に回っている。私はそんなところじゃ息ができない」と答えた。それを教えてくれた彼女に感謝している。
――ヨーコがあなたをバンドから引き離したという人もいる。本当のところは?
ジョン 67年に映画『ジョン・レノンの僕の戦争』を撮ってから、ずっとビートルズを抜ける理由を探していた。その気持ちは、ビートルズがツアーをやめたときから芽生えていた。でも、王宮から出ていくことが怖かったんだ。プレスリーはそれで命を落とした。王様は決まって忠臣に殺されることになっている。王様はあまりに多くを与えられ、甘やかされ、飲み過ぎる。全ては王様を玉座にとどまらせるためだ。そういう立場に置かれた人は、自分では何も気付かない。でも僕の場合は、ヨーコが気付かせてくれた。「ビートルズのエルビス」になることがどういうことか、現状維持だけを求める忠臣どもに囲まれているのはどういうことか。死と同じだ。ビートルズはそんなふうにして終わった。彼女がビートルズを「分断」したのではない。彼女は僕に、「あなたは裸の王様よ」と教えただけだ。
――70年代初めに、政治的に急進的な行動に出たことをどう振り返る?
ジョン あんな急進主義は偽物だ。なぜって、罪悪感からしでかしたものだからさ。お金を稼ぐことにいつも罪悪感があった。だから誰かにあげるか、失うことにした。偽善者というわけじゃない。何かを信じるときは(物事の)根っこの根っこまで信じるたちなんだ。だけどカメレオンだったので、周りにいる人と同じになってしまう。ちょっと立ち止まって考えれば(アメリカの左翼活動家だった)ジェリー・ルービンがやりたいことをできないでいるからといって、僕がアメリカ政府を相手に闘うなんて、全く何をやっていたんだか。彼は楽をしたかっただけだ。
――昔を懐かしむことは?
ジョン ないね! ビートルズをビートルズたらしめていたものがなんであれ、それが60年代を60年代たらしめていた。もしもジョンとポール、ジョージとリンゴが一緒になれば「ビートルズ」ができると考える人がいるなら、頭がどうかしている。ビートルズは等身大以上のことをやってのけた。どれだけ4人が望んでも、かつてのようなグループに戻ることは決してないね。僕とポールがまた組めばどうなるかって? 退屈だろうな。ジョージとリンゴはどうでもいい。曲を作っていたのは僕とポールなんだから。分かる?
ビートルズの曲の中にはもう一回作り直したい曲がたくさんある。僕が考えていた仕上がりと全然違うからね。だけど、ビートルズに戻るっていうのは、もう一度学校に行くようなもの......。同窓会に行くガラじゃないから。もう終わったんだ。