最新記事

映画

韓国映画館、コロナに追い込まれ崖っぷちの選択 20年で料金2倍に

2020年12月1日(火)20時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国の映画ファンは「景気が良くても悪くても映画館は値上げする」と不満だ。写真はソウルの映画館で。REUTERS/Joyce Lee

<ヒット作は観客動員数百万人が当たり前の韓国。そんな映画大国が今年は前年比7割減の危機的状況に──>

1896年12月1日、日本で初めて映画が一般公開されたことにちなんで、12月1日は「映画の日」と制定された。現在では、入場料の値引きなど、「映画の日」を祝うイベントを行う映画館も多い。

ここ数年、映画強国として世界から注目を集めている韓国でも、もちろん「映画の日」は存在する。

韓国では、10月27日が「映画の日(영화의 날)」とされている。1919年10月27日、キム・ドサン監督の映画『義理的仇討』が、韓国映画として初めて上映されたことから、1963年韓国映画人協会がこの日を記念して映画の日に制定したそうだ。

そんなめでたいはずの韓国「映画の日」から1カ月も経たない先月中旬、消費者にとって嬉しくない映画料金値上げのニュースが報道された。

筆者が韓国に住み始めた2000年。韓国の映画料金は6000〜7000ウォン(約600〜700円)だった。生活費を切り詰めてでも、映画は映画館で観ようと心に決めていたため、日本よりはるかに安かったこの料金はありがたかった。しかし、その後、年々値上がりを続け、今回シネコンチェーンを中心に1000ウォンの値上げが発表されたのだ。

映画は韓国人にとって身近な娯楽の一つである。映画好きな韓国民が理由なき値上げを許すはずがない。今回の価格改訂は、コロナウイルスによる影響で、映画館の経営が困難に追い込まれているためだ。これは今世界中の映画界が直面している課題だろう。

90年代のシネコンブームが料金平準化に

それでは、これまでの料金値上げにはどのような理由があったのだろうか。

1970年代後半、個人経営の劇場が多かった韓国の映画館は、観覧料にバラつきがあったものの、ソウルの一般的な劇場で平均1人500~700ウォン前後だった。80年代に入ると、2000ウォンにまで上がり、その後90年代に入って一気に上昇するが、これは物価と合わせた高騰である。1995年には6000ウォンに達し、数年間はこの価格で維持されていた。

そして、90年代後半から韓国にシネコンチェーンの波が押し寄せる。1998年、電気店の集まったテナントビル「テクノマート」に、韓国最大シネコンチェーンCGVの第1号店が登場すると、それに続くかのように、1999年にはロッテシネマ、そして翌年の2000年にはメガボックスと、現在の韓国映画界を席巻する3大シネコンが続いてオープンした。

シネコンが増えていくにつれて、それまで多少のばらつきがあった韓国の映画料金も、かなり統一化されていく。そして、2000年6月『ミッション:インポッシブル2』公開のタイミングで6000ウォンから7000ウォン(700円)に値上げされた。

アクションやSF大作に合わせ設備もグレードアップ

しばらくは7000ウォンで統一されていたが、2000年代後半に入り4DXやIMAX、3Dなどの体感をウリにした映画館自体の設備工事が頻繁に行われるようになる。

設備向上を理由に、丁度『トランスフォーマー』の公開時期に合わせて料金が8000ウォン(800円)に値上げされ、さらにこの頃から9000ウォン(900円)の週末料金が導入され、平日と休日の曜日別料金設定が開始された。

そして、「映画料金1万ウォン時代突入」と注目を集めたのが2013年の値上げだ。平日9000ウォン、週末は1万ウォン(千円)に変更されたのだが、反対の声も多く寄せられ、値上げ反対デモを行う人たちもいたことを覚えている。

その3年後の2016年、さらに値段を上げることとなるが、前回の世論の反対もあり、反発を避けるために、CGVとロッテは座席の位置別での料金体制を導入する。「プレミアム」や「エコノミー」といった名称を付け、料金幅を出すことによって選択肢を広げたように見せ、全体の価格をアップさせる作戦だ。しかし、「座席の位置で料金が違うのはわかりにくい」とかなり不満の声が多かった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

関税に対する市場の反応、想定されていた=トランプ氏

ワールド

米「NATOに引き続きコミット」、加盟国は国防費大

ビジネス

NY外為市場=ドル対円・ユーロで6カ月ぶり安値、ト

ワールド

米中軍当局者、上海で会談 中国の危険行動の低減巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中