韓国映画館、コロナに追い込まれ崖っぷちの選択 20年で料金2倍に
韓国の映画ファンは「景気が良くても悪くても映画館は値上げする」と不満だ。写真はソウルの映画館で。REUTERS/Joyce Lee
<ヒット作は観客動員数百万人が当たり前の韓国。そんな映画大国が今年は前年比7割減の危機的状況に──>
1896年12月1日、日本で初めて映画が一般公開されたことにちなんで、12月1日は「映画の日」と制定された。現在では、入場料の値引きなど、「映画の日」を祝うイベントを行う映画館も多い。
ここ数年、映画強国として世界から注目を集めている韓国でも、もちろん「映画の日」は存在する。
韓国では、10月27日が「映画の日(영화의 날)」とされている。1919年10月27日、キム・ドサン監督の映画『義理的仇討』が、韓国映画として初めて上映されたことから、1963年韓国映画人協会がこの日を記念して映画の日に制定したそうだ。
そんなめでたいはずの韓国「映画の日」から1カ月も経たない先月中旬、消費者にとって嬉しくない映画料金値上げのニュースが報道された。
筆者が韓国に住み始めた2000年。韓国の映画料金は6000〜7000ウォン(約600〜700円)だった。生活費を切り詰めてでも、映画は映画館で観ようと心に決めていたため、日本よりはるかに安かったこの料金はありがたかった。しかし、その後、年々値上がりを続け、今回シネコンチェーンを中心に1000ウォンの値上げが発表されたのだ。
映画は韓国人にとって身近な娯楽の一つである。映画好きな韓国民が理由なき値上げを許すはずがない。今回の価格改訂は、コロナウイルスによる影響で、映画館の経営が困難に追い込まれているためだ。これは今世界中の映画界が直面している課題だろう。
90年代のシネコンブームが料金平準化に
それでは、これまでの料金値上げにはどのような理由があったのだろうか。
1970年代後半、個人経営の劇場が多かった韓国の映画館は、観覧料にバラつきがあったものの、ソウルの一般的な劇場で平均1人500~700ウォン前後だった。80年代に入ると、2000ウォンにまで上がり、その後90年代に入って一気に上昇するが、これは物価と合わせた高騰である。1995年には6000ウォンに達し、数年間はこの価格で維持されていた。
そして、90年代後半から韓国にシネコンチェーンの波が押し寄せる。1998年、電気店の集まったテナントビル「テクノマート」に、韓国最大シネコンチェーンCGVの第1号店が登場すると、それに続くかのように、1999年にはロッテシネマ、そして翌年の2000年にはメガボックスと、現在の韓国映画界を席巻する3大シネコンが続いてオープンした。
シネコンが増えていくにつれて、それまで多少のばらつきがあった韓国の映画料金も、かなり統一化されていく。そして、2000年6月『ミッション:インポッシブル2』公開のタイミングで6000ウォンから7000ウォン(700円)に値上げされた。
アクションやSF大作に合わせ設備もグレードアップ
しばらくは7000ウォンで統一されていたが、2000年代後半に入り4DXやIMAX、3Dなどの体感をウリにした映画館自体の設備工事が頻繁に行われるようになる。
設備向上を理由に、丁度『トランスフォーマー』の公開時期に合わせて料金が8000ウォン(800円)に値上げされ、さらにこの頃から9000ウォン(900円)の週末料金が導入され、平日と休日の曜日別料金設定が開始された。
そして、「映画料金1万ウォン時代突入」と注目を集めたのが2013年の値上げだ。平日9000ウォン、週末は1万ウォン(千円)に変更されたのだが、反対の声も多く寄せられ、値上げ反対デモを行う人たちもいたことを覚えている。
その3年後の2016年、さらに値段を上げることとなるが、前回の世論の反対もあり、反発を避けるために、CGVとロッテは座席の位置別での料金体制を導入する。「プレミアム」や「エコノミー」といった名称を付け、料金幅を出すことによって選択肢を広げたように見せ、全体の価格をアップさせる作戦だ。しかし、「座席の位置で料金が違うのはわかりにくい」とかなり不満の声が多かった。