韓国、コロナ禍で公開見送る映画が続々 SF超大作「勝利号」もNetflixのブラックホールに吸収される?
ジンクスを打ち破り大ヒットを期待された勝利号だが
そして、今一番その行く末に注目が集まっているのが『勝利号(原題:승리호)』(監督チョ・ソンヒ、主演ソン・ジュンギ、キム・テリ)である。この作品は、メディアで紹介されるたびに"韓国映画史上初となる宇宙SF映画"、"韓国商業映画初のSF映画"という枕詞が付いてくる。
今、韓国映画は、世界中から注目を集めているが、意外にもSF実写映画(特に、未来や宇宙、ファンタジーもの)はヒットしないというジンクスがある。実際、これまでにもSFに挑戦した小規模作品はあったが、ことごとく失敗してきた。
そのうえ宇宙SFものは製作費もかかり、興行的な成功確率が低いため敬遠されがちだったが、ついに今年『勝利号』公開のニュースが飛び込んできた。
この作品、2092年の宇宙を舞台に宇宙ゴミ回収船「勝利号」の船員たちが、金儲けのために危険な取引に挑戦するという物語。ドラマ『太陽の末裔』で韓国をはじめアジア各国で人気を集めたソン・ジュンギの主演ということもり、今年一番のヒット作と期待されていた。
予告編が新しくなるたび、公開日が繰り下げられ......
もしこの映画が公開されてヒットすれば、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヒットで本格ゾンビ映画が韓国に根付いたように、国産SF映画も浸透し、今後製作数も増えるかもしれないと、映画ファンや業界関係者たちから多くの期待が寄せられていた。
『勝利号』の製作費は240億ウォンと言われている。日本で2021年1月公開予定の『新感染』の続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』は、かなりCGを多用していながら製作費は150億ウォンだ。たった95億ウォンで作られた『エクストリーム・ジョブ』は大ヒットで14倍の利益が出たことで有名である。こう比べると240億ウォンを投じた『勝利号』がいかに期待されている大作なのかがわかるだろう。
期待作らしく、本来は今年の夏休みの目玉作品として大々的に劇場公開される予定だった。しかし、ご存じの通り、コロナ・パンデミック発生で公開は中止され、次に旧暦お盆・秋夕連休の公開が嘱望されていたが、劇場状況は思ったより好転せず、さらに公開待機状態だった。ところが、今月に入り劇場未公開でネットフリックス配信に切り替えるのではないかと噂され始めた。
ただ、この『勝利号』がネットフリックスで公開されたとしても、ネットフリックスが、どれだけの金額で独占配信権を買い取るのか、それでどこまで資金回収できるのかにも注目が集まっている。映画『狩りの時間』の製作費は117億ウォンであり、かかった制作費が2倍以上違う。
ハリウッドがお得意のSFで大丈夫か?
一方で『狩りの時間』『コール』も、韓国のお得意なアクションやスリラージャンルだが、『勝利号』のような宇宙SFは、本来ならハリウッドの得意分野なので、ネットフリックスで公開されたときに見劣りしない出来になっているかも勝負どころといえる。
ちなみに、ネットフリックス行を決めた『狩りの時間』『コール』と、現在最もネットフリックス行に近いとされる『楽園の夜』の3作を見比べると、ネットフリックスの買い付け作品は、海外受賞歴や監督の知名度が重視されており、映画マニア層に響くかどうかが選定の基準になっている様子だ。ネットフリックスは、果たして『勝利号』の救世主となるのだろうか?
かつて韓国では、レンタルビデオ用のパッケージに「劇場公開作」と大きく記されることがステータスだった。それほど、「映画館での公開」というブランドはパワーをもっていた。しかし、時代は変化し、世界的パンデミックの前では、劇場で公開されたかどうかなど、まったく意味をもたなくなってしまった。その映画が劇場で公開されたのか、いや、そもそも映画かテレビドラマかという意識すら、今後ますます薄れていくだろう。