最新記事

映画

韓国、コロナ禍で公開見送る映画が続々 SF超大作「勝利号」もNetflixのブラックホールに吸収される?

2020年10月24日(土)12時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ソン・ジュンギ主演で本当ならこの夏大ヒットするはずだった『勝利号』だったが…… 카카오페이지 / YouTube

<映画館に観客が戻らない韓国は話題作がことごとく公開を取りやめNetflixにすがろうとしている>

新型コロナウイルスのパンデミックは最近になって、やっと各国で映画撮影再開や、公開日決定のニュースをちらほら聞くようになってきた。しかし、シネコンなど映画興業界はオープンしたのはいいものの、実際の集客に繋げるにはまだ少し時間がかかりそうだ。

今やエンターテイメント大国となったお隣の国・韓国では、先月の全国観客動員数が299万人と9月の観客動員数として過去最低を記録してしまった。

韓国映画振興委員会の発表によると、これは2019年の9月と比べ80%もの減少であり、また今年の1〜9月の観客動員数は、4986万人で4243億ウォンの売り上げだった。これも、前年比で71%もの売り上げ減少だという。

2019年と2020年の韓国映画観客動員数比較(KOBISデータより編集部作成)
 
 

韓国では、秋に旧暦のお盆である「秋夕(チュソク)」連休がある。この時期は、家族や友達同士で映画館に出かけることが多いため、例年は連休前から下半期の目玉となる大作映画が1週間ごとに封切される。今年は公開延期などで目玉作品が少なかったとはいえ、それでもこの観客動員の少なさは緊急事態と言える状態だ。

「背に腹はかえられず」劇場を捨てネトフリへ

コロナの影響で、未だに多くの人が劇場へ出向くことに躊躇しているなか、このまま公開しても興業の失敗は目に見えていると、新たな道を探るべく、劇場公開を諦めネットフリックスでの配信に切り替える例も登場した。

まず、その戦略で一気に有名になったのが今年公開予定だった『狩りの時間』である。本来なら、韓国映画で初となるベルリン国際映画祭スペシャル・ガラ部門に招待され、今年2月、満を持しての韓国内公開のはずだった。しかし、ちょうどその頃から韓国でクラスターが発生し、その後4月末に劇場公開をせずネットフリックスで190カ国世界配信の道を選んだ。

この韓国映画史上初の決断は、映画業界内では大きな話題となった。『狩りの時間』制作会社リトル・ビッグ・ピクチャーズのクォン・ジウォン代表は、以前ラジオに出演した際、「韓国での公開作を抱えながらも困っている他の会社から多くの問い合わせがあった」と語っている。

配給会社がネトフリ行きをを決める例も

次に"劇場未公開ネトフリ行"の道を選んだのは、配給会社「NEW」である。今年公開予定でNEWが配給を予定していた新作『コール(原題:콜)』(監督イ・チュンヒョン、主演パク・シネ)は、韓国の有名な制作会社ヨン・フィルムが作ったスリラー映画で、制作時から話題となっていた。

本来なら3月公開予定で準備されていたが、7月を過ぎても映画館での上映に踏み切れず、最終手段としてネットフリックスでの配信を決断した。

さらに、第77回ヴェネツィア国際映画祭で招待作として選出されていた韓国映画『楽園の夜(原題:낙원의 밤)』(監督パク・フンチョン、主演オム・テク、チョン・ヨビン、チャ・スンウォン)も、受賞後にNEW配給で公開される予定だったが、こちらも今の観客動員の状況だと、劇場公開を諦めネットフリックス配信となるのが有力であると言われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア第1四半期5.4%成長、ウクライナ侵攻で軍需

ワールド

ノルウェー政府系ファンド、シェルに気候変動対策の詳

ワールド

スペインの極右政党ボックス、欧州議会選へ向け大規模

ワールド

イランのライシ大統領と外相が死亡と当局者、ヘリ墜落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中