最新記事

K-POP

ビルボード1位獲得のBTS──ダイナマイトな快進撃の舞台裏

2020年10月1日(木)18時30分
クリストファー・モランフィー(音楽チャート評論家)

ストリーミング配信でも、「Dynamite」はBTS史上最大のヒットになっている。7人それぞれの見せ場もたっぷりあるMVは、配信直後からYouTubeで膨大な再生回数を記録している。

問題のラジオは、初週の再生回数はチャート入りするほどは伸びなかったが、ポップス専門局では既に自身最大のヒットになっている。「ポップ・ソングス」のチャートでは16位に急上昇しており、正真正銘の「アメリカン・ヒット」になりつつある。

リミックスが続々登場

このように「Dynamite」は、デジタルの後にラジオでもヒットする、いわばZ世代流だ。さらに、売り上げとストリーミングの数字を後押ししているのが、チームBTSが第1週に投下した圧倒的な数のリミックスだ。アコースティックにエレクトロニック・ダンスミュージック、「トロピカル」や「プールサイド」バージョンなどが次々に登場している。

売らんがための巧妙な仕掛けかもしれないが、今回のリミックスはいずれも、ラッパーや欧米の有名ボーカリストをフィーチャーしていない。複数のバージョンが、一時はiTunesのチャートのトップ4を独占した。

とはいえ、ダウンロード数が3月の「ON」の8万6000件から9月の「Dynamite」の26万5000件へと3倍に増えたのが、リミックスの影響だけとは思えない。何か要因があるはずだ。

大きな役割を担っているのは、英語の歌詞ではないか。ある専門家(筆者の旧友の14歳になる娘)は次のように語る。「彼らが初めて全部英語の曲をリリースするなんて、本当に興奮している......これまでよりずっと歌詞を覚えやすいから」

言語の問題は、ラジオのためだけでなく、欧米のファンのためでもあるのだ。

さて、BTSの次のアルバムは英語になるのか、それとも韓国語だろうか。Kポップの人気ガールズグループのブラックピンクも、「Dynamite」が開けた扉をくぐるのだろうか。4800万人のARMYにとって、Kポップの侵攻は始まったばかりだ。

©2020 The Slate Group

<本誌2020年9月29日号掲載>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

祭り群衆に車突っ込み11人死亡、カナダ西部 男拘束

ビジネス

英中銀、中央清算機関のストレステストで貿易戦争の影

ワールド

世界の軍事費2兆7200億ドル、冷戦後で最大=スト

ワールド

カナダ総選挙、与野党が最後の訴え トランプ氏対応争
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 6
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中