最新記事

K-POP

ビルボード1位獲得のBTS──ダイナマイトな快進撃の舞台裏

2020年10月1日(木)18時30分
クリストファー・モランフィー(音楽チャート評論家)

maglifestyle201001_BTS3.jpg

 「ON」でMTVビデオ・ミュージック・アワーズの全4部門を受賞し、授賞式に韓国からリモート出演して「Dynamite」を初披露(8月) VIACOM-HANDOUT-REUTERS

個人的な感想としては、とびきり独創的なハイブリッドだ。ここ5年の間にレトロなテイストで大ヒットした2曲(ジャスティン・ティンバーレイクの陽気な「キャント・ストップ・ザ・フィーリング!」と、マーク・ロンソンとブルーノ・マーズのエレクトロファンクな「アップタウン・ファンク」)を足し合わせたようにも聞こえる。

アメリカのファンを意識

しかし、歌詞が全て英語である必要は本当にあったのだろうか。

仮にBTSが韓国語にこだわり続けたとしても、いずれアメリカのシングルチャートを制したとも考えられる。BTSはこの2年半に何度か、アメリカのアルバムチャートを席巻している。18年の『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』は、Kポップのアルバムとして初めて全米1位を獲得しただけではない。欧米のアーティストをフィーチャーせず、英語は曲名と歌詞のごく一部だけで、大部分が韓国語だった。

一方で、BTSが常にアメリカのファンを意識してきたことも確かだ。初の全米トップ40入りを果たした2017年の「MIC Drop」(28位)は、ラッパーの Desiigner(デザイナー)をフィーチャーしたリミックス版でブレイク。2018年の「IDOL」(11位)は、大物ラッパーのニッキー・ミナージュをフィーチャーした。ホールジーを迎えた2019年の「Boy With Luv」は8位を獲得している。

2019年夏にリーダーのRMが、ラッパーのリル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロード」のリミックス版である「Seoul Town Road(ソウル・タウン・ロード)」にフィーチャーで参加。今年1月には、グラミー賞のステージでBTS全員とリル・ナズ・Xが共演した。

3月には『MAP OF THE SOUL:7』のリードシングルで、ほぼ全て韓国語の「ON」が初登場で全米4位を記録。一方で、オーストラリア出身の歌手シーアが参加したリミックス版はヒットしなかった。つまり、BTSの次のメジャーシングルは、いずれにせよ全米1位を獲得できたかもしれないのだ。

シングルに関しては、発売直後からチャート上位を獲得してきた最大の理由はダウンロード販売だ。ビルボードのデジタル・ソングズ・セールズで、たびたび1位を獲得。「FAKE LOVE」「IDOL」「ON」のリリース1週目のダウンロード数は、それぞれ2万9000件、4万3000件、8万6000件と順調に増えている。

「Dynamite」は、BTSの過去のヒット曲もしのぐ数字を記録。リリース第1週の売り上げは30万枚(うちダウンロードが26万5000件)。テイラー・スウィフトの「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ~私にこんなマネ、させるなんて」以来、過去3年で最大の週間デジタルセールスとなった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中