ビルボード1位獲得のBTS──ダイナマイトな快進撃の舞台裏
個人的な感想としては、とびきり独創的なハイブリッドだ。ここ5年の間にレトロなテイストで大ヒットした2曲(ジャスティン・ティンバーレイクの陽気な「キャント・ストップ・ザ・フィーリング!」と、マーク・ロンソンとブルーノ・マーズのエレクトロファンクな「アップタウン・ファンク」)を足し合わせたようにも聞こえる。
アメリカのファンを意識
しかし、歌詞が全て英語である必要は本当にあったのだろうか。
仮にBTSが韓国語にこだわり続けたとしても、いずれアメリカのシングルチャートを制したとも考えられる。BTSはこの2年半に何度か、アメリカのアルバムチャートを席巻している。18年の『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』は、Kポップのアルバムとして初めて全米1位を獲得しただけではない。欧米のアーティストをフィーチャーせず、英語は曲名と歌詞のごく一部だけで、大部分が韓国語だった。
一方で、BTSが常にアメリカのファンを意識してきたことも確かだ。初の全米トップ40入りを果たした2017年の「MIC Drop」(28位)は、ラッパーの Desiigner(デザイナー)をフィーチャーしたリミックス版でブレイク。2018年の「IDOL」(11位)は、大物ラッパーのニッキー・ミナージュをフィーチャーした。ホールジーを迎えた2019年の「Boy With Luv」は8位を獲得している。
2019年夏にリーダーのRMが、ラッパーのリル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロード」のリミックス版である「Seoul Town Road(ソウル・タウン・ロード)」にフィーチャーで参加。今年1月には、グラミー賞のステージでBTS全員とリル・ナズ・Xが共演した。
3月には『MAP OF THE SOUL:7』のリードシングルで、ほぼ全て韓国語の「ON」が初登場で全米4位を記録。一方で、オーストラリア出身の歌手シーアが参加したリミックス版はヒットしなかった。つまり、BTSの次のメジャーシングルは、いずれにせよ全米1位を獲得できたかもしれないのだ。
シングルに関しては、発売直後からチャート上位を獲得してきた最大の理由はダウンロード販売だ。ビルボードのデジタル・ソングズ・セールズで、たびたび1位を獲得。「FAKE LOVE」「IDOL」「ON」のリリース1週目のダウンロード数は、それぞれ2万9000件、4万3000件、8万6000件と順調に増えている。
「Dynamite」は、BTSの過去のヒット曲もしのぐ数字を記録。リリース第1週の売り上げは30万枚(うちダウンロードが26万5000件)。テイラー・スウィフトの「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ~私にこんなマネ、させるなんて」以来、過去3年で最大の週間デジタルセールスとなった。