ビルボード1位獲得のBTS──ダイナマイトな快進撃の舞台裏
メンバーの中でも英語が堪能なRMは昨年、「アメリカでナンバーワンになるために、自分たちらしさやアイデンティティーを変えたいとは思わない」と語っている。「突然、全て英語で歌ったり、全てを変えてしまったりしたら、BTSではなくなってしまう」
では、「Dynamite」をなぜ英語で歌ったのか。
その答えとして真っ先に思い付くのはラジオだろう。車社会のアメリカでは、ラジオでどのくらい曲がかかるかが、ヒットチャートの上位に行けるかどうかを決める大きな要因になる。
その点、BTSには2つのハードルがあった。まず、主なファン層が10代の若者で、ラジオの広告主にとって魅力的なターゲットではないこと。そしてBTSの曲には、アメリカのリスナーが一緒に声を張り上げて歌える英語のサビがなかったことだ。
ただ、「Dynamite」の成功の理由は今のところ、ラジオで頻繁に流れているからではなく、緻密に計算されたサウンドにありそうだ。筆者は初めてこの曲を聴いたとき、これは歌詞の言語に関係なくスマッシュヒットになると確信できた。
70年代のディスコ調に
もちろん、これまでのBTSの曲も十分ポップだった。「FAKE LOVE」はムーディーなエレクトロポップだし、アメリカの人気シンガーのホールジーをゲストに迎えた「Boy With Luv」はバブリーなポップ&ブルースだった。
だが、そのどれも病みつきになるようなサウンドではなかった。「Dynamite」はこれに対して、アメリカで確実にヒットするように作られた精密兵器と言っていい。
曲を書いたのは、イギリス人のデービッド・スチュワートとジェシカ・アゴンバー。アゴンバーはこれまでに、ヘイリー・スタインフェルドやジョナス・ブラザーズといった若手アーティストに曲を提供してきた。
プロデューサーも務めたスチュワートがローリングストーン誌に語ったところによると、「Dynamite」はBTSのアメリカのレーベルであるコロンビア・レコーズの「テンポがよくて、エキサイティングな曲」が欲しいという依頼を受けて書かれた。
そこで取り入れられたのが、今トレンドのディスコ・ポップだ(Kポップの面白いところは、これといった特徴的なサウンドがあるわけではなく、念入りにつくり込まれた韓国人アーティストが歌えば、どんな曲でもKポップになることだ)。
実際、ほとんどの批評で「Dynamite」はディスコ・ポップと見なされている。最近はデュア・リパからレディー・ガガまで、多くの人気アーティストが1970年代を彷彿させる曲を発表している。BTSもそのトレンドに乗って、見事に世界のチャートを制覇したわけだ。