閻連科:中国のタブーを描き続けるノーベル文学賞候補が選ぶ意外な5冊
『新華字典』(53年初版の中国の国民的国語辞典)と魯迅――徳田秋声は晩年、1つの言葉についてそれが正しいかどうかを寝ている息子をわざわざ起こして尋ねたらしい。今や私もほとんど同じような状況にある。『新華字典』は私が生涯逃れられない一冊であり、今日ではますます使うことが増えている。
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『新華字典』と同じように私の道連れとなってくれているのが魯迅である。しかし、中国の現実を離れたら、私にとって魯迅の意義はそれほど大きくはない。魯迅と同じく、私は魯迅の作品が中国の現実に意義のないものになってくれることをずっと待ち望んでいる。魯迅が私の元を離れ、手元にあるのは『新華字典』だけになることを待ち望んでいるのである。
(筆者は58年、中国・河南省の貧村に生まれる。肉体労働者を経て78年に人民解放軍に入り、部隊内の創作学習班に参加。現代中国社会のタブーを取り上げた作品で知られ、多くが発禁処分に。代表作に『人民に奉仕する』『愉楽』『炸裂志』など。本稿の翻訳は泉京鹿)
<2020年8月11日/18日号「人生を変えた55冊」特集より>
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2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか