韓国映画界、コロナ禍の苦境を救うのはゾンビ? 早くも動員150万人のヒットに
当初は鳴かず飛ばずだったゾンビもの
韓国初めての商業用ゾンビ映画は1980年の『괴시』だ。しかしこの映画、内容は1974年製作スペインのゾンビ映画『Non si deve profanare il sonno dei morti(英題:Let Sleeping Corpses Lie))をコピーしたのではないかと論争にもなった。
その後、ゾンビはしばらくの間、韓国商業映画に現れることはなかったが、2006年『죽음의 숲(英題:Dark Forest)』というオムニバス映画の4つ目のエピソード『ある日突然』にゾンビが登場する。これは、サム・ライミ監督の名作『死霊のはらわた』のような典型的アメリカン・スプラッター系ゾンビ映画だった。
その翌年には、映画『GP506』が公開される。これは韓国軍の基地でゾンビが発生し、その謎に迫るという内容だが、予告編・ポスター共にゾンビよりもミステリー要素のみ協調し公開された。同年、映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』のチャン・フン監督が作った短編映画『The Villains』が第11回富川ファンタスティック映画祭で短編特別賞を受賞する。これは、2006年のワールドカップ日韓共同開催の応援で集まった人たちからゾンビ感染が始まるというストーリーだ。
2010年には、韓国にゾンビウィルスが蔓延した世界を6話で描いたオムニバスコメディー映画『隣のゾンビ』、2012年には、『人類滅亡計画書(第一話:素晴らしい新世界)』と『ホラー・ストーリーズ(第四話:救急車)』の2本のオムニバス映画でゾンビを扱ったエピシードが公開されている。さらに、2014年には韓国映画史上初のザ・ハイティーン・ゾンビ映画と銘打った『ゾンビスクール』が公開されたが興行的には失敗。
パニック映画として売り出した『新感染 ファイナル・エクスプレス』
そして、2016年7月20日『新感染 ファイナル・エクスプレス』が満を持して公開される。ブロックバスター級のゾンビ映画としては韓国映画史上初の試みであった。それ故、宣伝も慎重にならざるを得ず、予告編やポスターには逃げ惑う人びとを中心に構成され、ゾンビ映画というよりも、パニック映画の要素を前面に押し出している。結果的にそれが功を奏してか、ゾンビ映画では驚異的といえる観客動員1000万人を突破した。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』の公開から約1カ月後の8月17日、同じヨン・サンホ監督が前日談として作ったアニメーション『ソウル・ステーション/パンデミック』が公開された。
さらにその2年後、2018年には貧乏家族がゾンビを使って商売を始めたことから巻き起こる騒動を描いたコメディー映画『感染家族』と、時代劇×ゾンビという設定の『王宮の夜鬼』が公開される。時代劇系Kゾンビといえば、Netflixで世界的ヒットしたドラマ『キングダム(2019)』が思い浮かぶが、その1年前にすでに映画では登場していた。
そして今年『#生きている(英題:#ALIVE)』と、『新感染〜』から4年後の世界を描いた『半島』が公開される。
このように、これまでの韓国映画におけるゾンビの流れを見ていると、突然ゾンビ映画がヒットしたのではなく、実は2010年から2年おきにゾンビ作品が公開されてきたことがわかる。「ゾンビとSFは当たらない」というジンクスにもめげず、韓国映画界がコンスタントに製作を続けたことが後のビックヒットに繋がったのかもしれない。