最新記事

映画

韓国映画界、コロナ禍の苦境を救うのはゾンビ? 早くも動員150万人のヒットに

2020年7月10日(金)18時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

幽霊よりゾンビが受けた理由は?

そもそも、韓国では非現実的な設定の韓国産映画が好まれにくい。韓国人の映画関係者の友人によると、「韓国が舞台で韓国人の俳優だと、リアル過ぎてSFやありえない設定が嘘くさく感じてしまう」そうだ。そういう点で見れば、ゾンビよりも人間関係やドラマ部分を強調し、一般的なパニック映画にすることが成功の要因なのかもしれない。さらに、ゾンビは幽霊など得体のしれない物体でなく戦えるモンスターであることから、アクションシーンで見せ場を作りやすく、観客の心を見事につかんだのだろう。

ゾンビには大きく分けて2種類に分けられる。埋葬された後、魔術などの何かの力で生き返り、のろのろ動くスロー系ゾンビと、ウィルスなどで死の直後覚醒するハイパー系走れるゾンビだ。そもそも、日本でゾンビがあまり定着せず、ホラーといえば幽霊なのは、日本は火葬だからなのではないだろうか?

韓国は、今でこそ火葬が多いが、元々は儒教で土葬なので、ゾンビのような生き帰りは怖さとして潜在的に残っているのかもしれない。火葬に移行した背景には、土地の確保が難しいため、また埋葬方法が自然と同化させる埋め方で管理が大変である為と言われているが、2000年に「葬事等に関する法律」が見直され、火葬での納骨の普及を、国と地方自治体が積極的に行うことを義務付けた背景がある。

さて、日本発Jホラーの世界的ブームメントのきっかけと言えば、90年代後半の『リング』と2000年の『呪怨』だろう。『リング』はハリウッドリメイクも公開され、『呪怨』に関しては今月Netflixで新作のドラマ版が世界配信された。しかし、一部のJホラー作品は恐怖というよりは若干コメディーとも取れるような作品が多く、世界が求めるJホラーの姿とズレが生じ、いつの間にか期待値が薄れてしまった。Kゾンビはまだ定着の兆しを見せ始めたところだが、ただの一時的なブームにならぬように今後の作品にも期待したい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中