「あなた」はもはや日本語ではない
これには近頃、急速に増えている英語の映画やテレビドラマの吹き替えも関係があるように思う。字幕より吹き替えのほうが逐語訳に近いからだ。日本語と違って、「You」は誰にでも使える。「あなた(=You)」が広く使われるようになった背景には、そんなこともあるのではないか。
見方を変えれば、英語(外国語)の影響はそれほどに大きくなっているともいえる。そのうち「わたしの不安たち」とか「政策の失敗たち」など、抽象名詞まで複数形にする人たちも出てくるのだろうか......。日本語がどのように変わってきているのか、それについてはいずれ機会を改めて述べたいと思う。
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[筆者]
平野卿子
翻訳家。お茶の水女子大学卒業後、ドイツ・テュービンゲン大学留学。訳書に『敏感すぎるあなたへ――緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』(CCCメディアハウス)、『ネオナチの少女』(筑摩書房)、『キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生』(河出書房新社、2006年レッシング・ドイツ連邦共和国翻訳賞受賞)など多数。著書に『肌断食――スキンケア、やめました』(河出書房新社)がある。
2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。