最新記事

メディア

懲りない韓国メディア 「n番部屋」事件後も性商品化などの表現で炎上続々

2020年4月27日(月)21時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

一昨年の『SKYキャッスル』以上の視聴率を記録した話題作『夫婦の世界』でも性差別や暴力シーンなど過激な演出が炎上している JTBC/YouTube

<社会の不正や差別に対し敏感な韓国社会。その国民性をメディアはまるで理解していないようだ>

SNSアプリTelegramを使い、女性を脅迫しながら性的動画を撮影させ、それを有料会員に共有していた「n番部屋」事件から約1カ月あまり。韓国を震撼させたこの事件が落とした影響はすさまじく、今韓国ではTVなどメディアでの表現に神経質にならざるをえない状態だという。

その証拠に、4月下旬、連日のようにコメディ番組、ドラマなどで性商品化や性搾取表現についての抗議が相次ぎ、謝罪にまで至るケースが続いている。

今、韓国で一番話題の新作ドラマ『夫婦の世界』もやり玉にあげられた。

『SKYキャッスル』を超える今話題のドラマで......

このドラマはケーブルテレビ局JTBCで3月27日から放送開始された不倫を扱ったドラマである。イギリスBBCの人気ドラマ『女医フォスター 夫の情事、私の決断』が原作で、毎週金曜日土曜日に放送中だ。4月25日放送分では、首都圏では視聴率25.9%を出し、一昨年に社会現象を巻き起こしたJTBCの話題作『SKYキャッスル』の記録を更新する大ヒットとなっている。

ただ、不倫を扱った作品ということで、さまざまな批判も受けやすい。4月18日の第8話放送分では、主人公の男性に近づいてきたカフェの女性マネージャーが「鞄一つぐらい買ってくれてもいいんじゃない? 私が恋人になってあげるんだから」と言うシーンがあったのだが、このせりふが波紋を呼び、視聴者からクレームが相次ぐようになった。

高価な物で動く女性というイメージが時代錯誤であり、女性蔑視であるという理由だ。番組公式HPのコメント掲示板には「n番部屋事件が起こってから、まだそんなに月日がたったわけではないのに、女性の性を商品化して容易にお金を稼ぐことができると認識させる表現は危ない」など具体的にn番部屋という単語を含んだ批判意見が集中した。

また、この日の放送では、女性の家に家宅侵入した犯人が女性の首を絞めるなど暴行するシーンがあったのだが、こちらも問題視されている。カメラが加害者の視線になる演出で撮影されていて、VR映像のような臨場感が感じられる。あまりにもリアルな暴行シーンに「視聴中気分が悪くなった」というコメントや、「視聴者議会、放送通信委員会にすでに通報済みだ」という意見もあったため、今後倫理審議に掛けられる可能性もある。

一方、公営放送KBSでも18日に放送した週末ホームドラマ『一度行ってきました』で、同じく性商品化表現が問題視され、KBSが謝罪する事態にまで発展してしまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中