韓国ネットの闇に晒された女優チョン・ユミと映画『82年生まれ、キム・ジヨン』
批判への恐れより、いい作品を観てほしい思いが勝った
去る9月30日、『82年生まれ、キム・ジヨン』の公開を前にして、制作発表報告会と呼ばれる記者会見が行われた。チョン・ユミはその場で、記者からの「評点テロと悪質なSNS書き込みに対してどう思うか」という質問に、「大きな負担にはならなかった。この映画を作りたい、そして映画が素晴らしかったので共有したいという気持ちの方が勝り、気にならなかった」と答えた。また夫役のコン・ユも「良い脚本を読んで作品に参加することをためらわせるような問題ではない。意見の違いは常に存在するし、どちらが正しいとか間違っているとかは私が決めることではない」と述べた。
様々な批判や評価テロなどを受けた『82年生まれ、キム・ジヨン』だが、10月23日の公開以降、順調に観客が伸びて、3,641,869人(11/26時点)を動員している。
童顔の少女から同世代を代弁する女優へ
筆者は、ソウル芸術大学映画学科でユミと同期生だった。当時から映画監督志望の先輩や同期から短編映画のオファーをよく受けるほど人気があり、一緒に短編映画を撮ったこともある。当時はまだ透明感のある少女の印象が強い童顔の女優だった。まさかその17年後に同年代の女性たちを代弁し、韓国社会に一石を投じる作品に主演するとは思ってもいなかった。
映画とは、何百、何千もの人が関わって作られるが、その中でも一番前に立っている監督・俳優は批判の標的になりやすい。今回のような議論を呼ぶ作品の場合、ひょっとしたら出演すれば今後の俳優人生にも影響が出てしまうかもしれない。そんな状況でもこの作品を選び、毅然と自分の主張を述べ、悪質な書き込みにはきちんと対処したユミに拍手を送りたい。
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