配信サービス全盛の今、映画館はどこへ向かう? ビジュアル重視の韓国、定額制のアメリカ
夕焼けが観られる海辺の映画館
CGVと並ぶ韓国3大シネコンの一つメガボックスの三千浦店では、海のすぐ横に映画館があることから、これを利用し、館内の壁一面がガラス窓になっていて、時間によっては美しい夕焼けも見ることができる。映画上映時にブラインドが降りてきて窓からの光を遮る仕組みだ。また、海と言えば、済州島の新羅ホテルがプール映画館をオープンさせたと発表した。新羅ホテルは4年前に韓国内で初めてプール映画館を運営していたが、今回本格的にリモデリングした。子供と大人のプールにそれぞれスクリーンを設置し上映作品の区別を図る予定だ。実際の海をバックにしたスクリーンで海を舞台にした映画を観たら、臨場感はどれほどだろう。
もともと韓国はCGVを中心に映画館でできることを模索し、様々なアイディアを実現化させることが得意である。例えば、前方以外に側面にも映像を投影する三面スクリーンの「スクリーンX」や、画面と連動して座席が振動するなど五感を刺激する「4DX」は日本でも多くの映画館で導入され始めているが、これもCGVが開発した。なんでもアイディアが出たら、とりあえずやってみるという韓国の国民性が良い方向に動いているようだ。
アメリカは映画館もサブスクリプションを導入
映画の本場アメリカの映画館ではどのような取り組みが行われているだろうか。アメリカではソファー型チェアーの人気が高い。これは、座席の横にボタンがあり、好きな角度まで背もたれを倒すことができる。ベッド型まではいかないが横になって映画を観る感覚が楽しめるのは、床生活文化ではなくソファー文化が根付いているアメリカらしい特徴だ。大画面のIMAXなども、大きな映画館に行けばあるが、趣向を凝らしたアイディア勝負の韓国と比べると、映画館の施設で工夫するというよりは、値段設定などのシステムで客足を獲得する方法をとっているように感じる。
アメリカ最大シネコン「リーガルシネマズ」では、この夏regal unlimitedという定額料金制度を導入して話題となった。1か月20ドル前後を払えば映画館で映画が見放題になる。また、リーガルシネマと並ぶ大手シネコンチェーンAMCでもすでに定額料金制度を実施しており、こちらは3作までという制限付きだが1か月20~24ドル前後の価格設定だ。
シネマ--クでは、約9ドルで1チケットに加え、劇場内のスナックが全て20%オフの定額会員制度を実施している。
銃射撃が増える一方のアメリカでは、銃を携帯した映画館警備員を見かけるようになった。2012年、コロラド州にある映画館でバットマンシリーズ『ダークナイト』の上映時、バットマンの宿敵であるジョーカーに扮した男が館内で銃を乱射し12人が死亡、58人が負傷した。そのため、同映画館は今回封切りされた『ジョーカー』の上映を見送っている。アメリカでも韓国同様「リラックスして映画を鑑賞できる環境」を映画館に求めるのなら、安全性が今後の課題になっていくだろう。