最新記事

映画

配信サービス全盛の今、映画館はどこへ向かう? ビジュアル重視の韓国、定額制のアメリカ

2019年10月7日(月)18時13分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

夕焼けが観られる海辺の映画館

newsweek_20191007_175410.jpg

 メガボックスの三千浦店の客席から見る夕焼け。꽃보다찌야 / YoTube

CGVと並ぶ韓国3大シネコンの一つメガボックスの三千浦店では、海のすぐ横に映画館があることから、これを利用し、館内の壁一面がガラス窓になっていて、時間によっては美しい夕焼けも見ることができる。映画上映時にブラインドが降りてきて窓からの光を遮る仕組みだ。また、海と言えば、済州島の新羅ホテルがプール映画館をオープンさせたと発表した。新羅ホテルは4年前に韓国内で初めてプール映画館を運営していたが、今回本格的にリモデリングした。子供と大人のプールにそれぞれスクリーンを設置し上映作品の区別を図る予定だ。実際の海をバックにしたスクリーンで海を舞台にした映画を観たら、臨場感はどれほどだろう。

もともと韓国はCGVを中心に映画館でできることを模索し、様々なアイディアを実現化させることが得意である。例えば、前方以外に側面にも映像を投影する三面スクリーンの「スクリーンX」や、画面と連動して座席が振動するなど五感を刺激する「4DX」は日本でも多くの映画館で導入され始めているが、これもCGVが開発した。なんでもアイディアが出たら、とりあえずやってみるという韓国の国民性が良い方向に動いているようだ。

アメリカは映画館もサブスクリプションを導入

映画の本場アメリカの映画館ではどのような取り組みが行われているだろうか。アメリカではソファー型チェアーの人気が高い。これは、座席の横にボタンがあり、好きな角度まで背もたれを倒すことができる。ベッド型まではいかないが横になって映画を観る感覚が楽しめるのは、床生活文化ではなくソファー文化が根付いているアメリカらしい特徴だ。大画面のIMAXなども、大きな映画館に行けばあるが、趣向を凝らしたアイディア勝負の韓国と比べると、映画館の施設で工夫するというよりは、値段設定などのシステムで客足を獲得する方法をとっているように感じる。

アメリカ最大シネコン「リーガルシネマズ」では、この夏regal unlimitedという定額料金制度を導入して話題となった。1か月20ドル前後を払えば映画館で映画が見放題になる。また、リーガルシネマと並ぶ大手シネコンチェーンAMCでもすでに定額料金制度を実施しており、こちらは3作までという制限付きだが1か月20~24ドル前後の価格設定だ。
シネマ--クでは、約9ドルで1チケットに加え、劇場内のスナックが全て20%オフの定額会員制度を実施している。

銃射撃が増える一方のアメリカでは、銃を携帯した映画館警備員を見かけるようになった。2012年、コロラド州にある映画館でバットマンシリーズ『ダークナイト』の上映時、バットマンの宿敵であるジョーカーに扮した男が館内で銃を乱射し12人が死亡、58人が負傷した。そのため、同映画館は今回封切りされた『ジョーカー』の上映を見送っている。アメリカでも韓国同様「リラックスして映画を鑑賞できる環境」を映画館に求めるのなら、安全性が今後の課題になっていくだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中