配信サービス全盛の今、映画館はどこへ向かう? ビジュアル重視の韓国、定額制のアメリカ
観客を取り戻そうと映画業界はさまざまな映画鑑賞のスタイルを提案している。Shaiith - iStockphoto
<あらゆるコンテンツがスマートフォンに収まり個人で楽しむ時代。リアルのサービスを提供する映画館はどうやって観客を振り向かせようとしているか>
「映画を観る」という言葉を聞いて、もう「映画館に行く」という意味で捉える人はどのくらいいるだろうか? 今や映画を観る方法は様々だ。観客が映画を観る環境の選択肢がどんどん広まっている。特に、アマゾンプライムビデオやネットフリックスなど、ネット配信サービスが定着したことも大きな変化だと言える。日本はもとより韓国でも、わざわざ時間を調べて映画館に足を運び、1本の映画に千円近くを払う「映画館で観る映画」は時間とお金を浪費する贅沢な娯楽になりつつある。こうしたなか、映画館は観客を少しでも呼び寄せるため、様々な工夫を始めているようだ。
数年前、韓国で寝ながら観られるベッド型の客席のある映画館が話題となりSNSを中心に話題となったが、いまやベッド型座席は珍しいものではなくなってしまった。韓国では、ここ数年ベッド型座席に負けないユニークな映画館が続々と誕生している
映画館についてのアイデアを公募、実現化
韓国最大のシネコンチェーンCGV江辺店では、「シネ&フォレ」という森と映画を組み合わせた映画館が誕生した。これは、2017年に行われたCGV新事業アイディア公募展から生まれた映画館で、まるで森の中で映画を観ている感覚になる。客席のソファーが人工芝の上に直接設置され、以前123席用だった館内に48席のみ座席が設置されているため、周りを気にせずリラックスして映画を観覧することができる。そのこだわりは見た目だけではない。室内の酸素濃度を森の中と同様21%に上げているという。一般的なソウルの街中の酸素濃度は18~19%。2~3%の差だが、これがリラックス感を更に高めると、来館した観客に大好評のようだ。
同じくCGVの往十里では、こちらも「リラックス」をテーマに、まるで自分の家でくつろぎながら映画を観ることができる「リビングルーム」型の映画館が誕生した。ピンクの家風の扉を開けると、席ごとにインテリアが違った造りになっており、ソファーやテーブル、照明などが置かれている。さらに、この映画館の特徴はこれだけではない。なんと、映画が上映されている間、館内の照明はすべて落とされず明るいまま。そして、携帯の使用も可能だという。技術の進歩で、暗くなくても上映可能なLEDスクリーンを使用しており、明るい場内でも通常と同様に観覧可能である。また、前の席との間に壁がある為、前方で携帯電話を使用しても画面の明るさが邪魔にならないように座席設計されている。今までの映画館でのタブーにあえて挑戦して観客のニーズにこたえている。