建造物崩壊にIMF危機...... 不穏な90年代韓国の青春を描いた映画『ハチドリ』異例のヒット
『ハチドリ』を羽ばたかせた独立系映画の支援制度
今までにも、韓国では低予算の映画が、何億もかけた一般映画を抑えて成功する例があった。もちろん作品の力があるからこそのヒットではあるが、実は、独立系映画へのサポート体制もそれに一役買っている。
韓国では、インディーズ映画の上映を支えるために、国からアート系映画館へ「独立映画上映館運営支援金」が支給されている。この支援を受けるためには、年間60%以上の芸術映画を上映しているか、映画館が保険に加入しているか、などの条件をクリアし、行政機関である映画振興委員会の審査を通過しなければならない。条件をクリアするうえでも、映画館は多様な外国映画やアート系映画を進んで上映するようになるのだ。
また、韓国では映画製作の支援も多く、制作費支給はもちろん、機材レンタルや編集や音響のミキシングを行うポストプロダクションの場所の提供なども行われている。映画祭などで上映されている韓国映画のエンドロールを注意して見ていると、支援に自治体や公募名、団体の名前がよくクレジットされている。
このように、独立映画が定期的にこのようにヒットし、きちんと注目を集めヒットする状況が整っているのは、行政のバックアップがあってのことだろう。以前、韓国の映画祭で日本の若い監督と話す機会があった。彼は韓国のインディーズ映画業界について「芸術に国の支援が入ると自分の主張が曲げられてしまうかもしれない。それなら自分のアートに行政の支援は必要ない」と言っていたが、もっと柔軟に考え、利用できるものは利用し、活用する精神で映画を撮れないものかと感じた。
韓国公開時、マスコミ試写会での舞台挨拶でキム・ボラ監督は、題名の『ハチドリ』について「ハチドリは、世界で一番小さな鳥でありながら1秒に羽を平均80回羽ばたかせている。動物図鑑によると、希望、愛、生命力などを象徴しているそうだ。主人公ウニと似ていると思った」と語った。
映画『ハチドリ』は文字通り、世界に羽ばたき認められ、凱旋封切となる韓国で評価を受けている。今後も、この『ハチドリ』のように多くの独立映画が韓国から羽ばたいていくことを期待したい。