日韓関係悪化のさなかアジアを代表する釜山国際映画祭開催 日本映画はどうなる?
ヴェネツィアに続きネット配信系映画を支持
映画祭といえば、いまだ全世界の映画祭でイシューとなっている配信系映画を上映するか排除するかという問題を避けては通れないだろう。今年、釜山国際映画祭はネットフリックス制作の映画『ザ・キング ヘンリー5世』の招待上映を発表した。
映画祭委員長は記者会見で「ヴェネツィア国際映画祭と同じ主張だ。映画『ローマ』のように素晴らしい映画なら招待することができるという文脈で『ザ・キング』も招待をした。ビデオストリーミングプラットホームが活性化している状況で保守的な態度は未来に賢明に対処していない。ビデオストリーミングプラットホーム、あるいは芸術映画を製作・配給するプラットホームと協業を結んでアジア映画を映画祭期間段階から配給, 普及する方案を深刻に悩まなければならない」と語っている。
これで、釜山国際映画祭ははっきりと配信系映画賛成派の意思を表明したことになる。もともとインターネットダウンロードが盛んで、過去には映画館封切り日からすでにストリーミングも開始可能な作品も存在した韓国らしいといえば、韓国らしい判断だろう。
またここ数年、世界的に高まるフェミニズムの流れも相まって、映画祭の記者会見では「女性映画監督の作品は今年全体の27%。これを来年は35%まで引き上げたい」という発表もあった。近年フェミニズムの声が高まる韓国では、こういう部分でやはり進んでいるように感じる。映画業界は長い間男性社会が続いてきたが、今や女性のスタッフ・監督もたくさん活躍している。釜山国際映画祭は、今後もアジアを代表する映画祭としてアジアの女性映画人を引っ張っていく存在になってほしい。
釜山国際映画祭はこれまで、アジアに特化した映画祭というテーマをぶれずに続けてきた。そんな釜山国際映画祭の前では、日韓関係悪化などの問題は小さな出来事の一つなのだろう。アジア各国を見渡した時、今一番素晴らしいと思った監督に賞を与えるだけのこと。たとえ、その監督の国籍が日本であったとしてもだ。
良い作品を上映し、観客に届ける。映画と人とが出会える場を提供する。そのシンプルな信念さえ揺るがなければ、これからも釜山はアジアの中でその存在を確立していくだろう。今回のアジア各国の国旗の色を配色にした、力強い映画祭公式ポスターの旗を振りながら先頭に立ち、これからも先導していく存在でいてほしい。