最新記事

映画

日韓関係悪化のさなかアジアを代表する釜山国際映画祭開催 日本映画はどうなる?

2019年9月25日(水)19時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)


映画祭の運営に政治が介入し、開催が危ぶまれた3年前、映画祭支持を表明した是枝裕和監督。今の状況とも合致するメッセージだ Busan International Film Festival / YouTube


日本映画のボイコットは?

さて、気になるのは、ここ最近の日韓関係悪化に伴う映画祭での日本映画に対する影響だ。日本政府による韓国向け半導体材料の輸出規制が明らかになった当初の7〜8月頃には、韓国でも人気だった日本アニメ映画の公開が見送られる問題や、映画祭で映画が上映されるか否かでニュースに大きく取り上げられ、映画祭委員長がSNSにて上映に対する映画祭側の意見を公表するなど、映画界にも少なからず日韓関係の亀裂が入ろうとしていた。

釜山国際映画祭では、毎年短編映画から商業大作映画まで様ざまな日本映画が上映され、さらに日本人監督や俳優たちも数多く招待されてきた。

今年、釜山には日韓関係はどのように影響されたのだろうか。韓国を代表する映画祭であるため、その影響は心配されたが、今年も13本の日本映画が上映されることが決まっている。さらにそれだけにとどまらず「アジア映画人賞」には日本人である是枝裕和監督の受賞が決定、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞後第1作として話題の彼の最新作『真実』の上映も決定している。映画祭側によると「関係が悪化した7月以前にこの賞の授与は決定していたが、その後も変更するつもりはなかった。政治的見解や悪化した日韓関係とは無関係である」と発表している。

政治的に日韓を意識し左右されるわけではなく、素晴らしい映画を作ってきた監督へ、その功績を称えて賞を贈るだけのことだ、という淡々とした立場は素晴らしい。

もちろん、韓国人の中には日本映画を観たくないと思う人がいるかもしれない。観るか観ないかは、「個人の自由」なのでそれでもかまわないと思っている。ただし、観たいと思っている人、観てから判断しようと思っている人の「個人の自由」もあることを忘れてはならないし、邪魔するようなことはあってはならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中