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パックンのお笑い国際情勢入門

「日本にも政治風刺はある、強かったのは太平洋戦争のとき」早坂隆×パックン

2019年8月9日(金)19時45分
ニューズウィーク日本版編集部

パックン あのパターン(のジョーク)はよくあるんですよね。Q&A、Q&Aと、質問が2つ、答えが2つあって、同じ質問を繰り返して、最後の答えでオトすというパターン。例えば、いま適当に作るけれど、アメリカの情勢に置き換えると――

Q:共和党支持者はどういう人?
A:キリスト様を信じる人。
Q:民主党支持者はどういう人?
A:キリスト様のように振る舞う人。

こんなふうに、できますよね。有言実行なのかどうかとか、行為の中の矛盾を指摘する。ルーマニア人は集まってこういうジョークを言い合うのが、不満のはけ口になっていた。

早坂 そう、はけ口だった。その時の政権だったり、自分が圧力を感じるものに対して、それを笑う。独裁色の強い国ほど、ジョークが発達するという歴史がある。旧ソ連、ルーマニア、東ヨーロッパに多い。ソ連はやはりスターリンとかがいて、笑いのネタとしてはいいキャラクターだった。

ルーマニアに行かれたことはありますか?

パックン ないです。たぶん東ヨーロッパだったら、ユダヤ系を取り上げるジョークはもともとあったのでしょうけど、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と同時に滅びたのかどうか(が気になる)。

早坂 ユダヤ系のジョーク、ありますよ。ルーマニアでは(首都の)ブカレストにユダヤ人がもともと多かったので。じゃあ、そのユダヤジョークを1つ言うと――

Q:ユダヤ人はなぜ鼻が大きいのか?
A:空気はタダだから。

「日本の笑いはすごくレベルが高いが...」

パックン なるほど。ユダヤ人はケチだというステレオタイプを生かしたジョーク。これはアメリカにも多い。

日本人以外で、ジョークを持たない国はある?

早坂 ジョークを探して困ったのは、5年前に行ったパラオとか、南太平洋の国。パラオでジョークを教えてくれって言っても、全然集まらなかった。

パックン へぇ、面白い。なんでですかね。

早坂 なぜでしょう。伝統的な笑い話はあったのかもしれないけれど、ジョークを言い合う文化はなくて、教えてもらえなかった。基本的にはジョークはヨーロッパ人、アメリカ人の文化。

パックン アメリカの文化で育った僕からすると、ジョークがないのは非常識。夜みんなで集まって、(ジョークがなかったら)どういう話をするのか、と思うわけ。日本の居酒屋に行くと、みんな笑っている。でも、ジョークを言っているわけでもなくて、なぜみんな笑っているのかと(不思議だった)。来日して、これを理解するのに結構時間がかかった。

ここでずばり聞きましょう。なぜ日本にジョークはないのか。

早坂 ジョークがない......確かに日本には、欧米にあるようなジョークを披露し合うという文化はない。でも、僕は日本のお笑いはすごくレベルが高いと思っている。

パックン それは僕も思っている。

早坂 自分が日本人だからということもあるけれど、僕は日本のお笑いが一番面白いと思っている。

パックン そうですね。僕がやるぐらいだから!

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