「日本のお笑いって変なの?」をパックンが外国人3人と激論しました
NOT STANDUP, SIT DOWN COMEDY CHAT
(左から)パックン、周来友、チャド・マレーン、ナジーブ・エルカシュ ILLUSTRATION BY KAZUSHIGE AKITA FOR NEWSWEEK JAPAN
<外国と日本のユーモアはどう違うのか。なぜ日本には政治ネタのお笑いがないのか。パックン、周来友、チャド・マレーン、ナジーブ・エルカシュの4人で「研究」した>
8月6日発売のニューズウィーク日本版「パックンのお笑い国際情勢入門」特集(8月13&20日号)で、「世界の政治を題材に日本の読者を笑わせる」という難題に挑んだパックン(パトリック・ハーラン)は、6月下旬のある夜、取材の一環として、3人の在日外国人を都内某所に呼び集めた。
中国人のジャーナリストで実業家、タレントでもある周来友(しゅう・らいゆう)さん(56)。吉本興業所属のお笑い芸人で、『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)の著書もあるオーストラリア出身のチャド・マレーンさん(39)。そして、ダジャレ好きなシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュさん(45)。いずれも日本のお笑いをよく知る異文化理解のエキスパートたちだ。
外国と日本のユーモアはどう違うのか。その違いの背後には何があるのか。なぜ日本には政治をネタにしたお笑いがないのか。『笑点』の大喜利よろしくパックンが司会を務め、各人にお題を振る。時に得意のジョークが飛び交い、時にディベートの様相を呈し、時に下ネタに走る4人。
日本ではお笑い芸人の政治的発言が問題視されがちだが、なぜダメなのか、むしろ不健全じゃないのか――。本誌特集では、ハーバード大卒のお笑い芸人であるパックンが、お笑い文化をマジメに研究し、日本人が知らなかった政治の見方をお届けする。また、パックンによる笑える「危険人物」解説も収録している。
3時間近くに及んだ「外国人座談会」は特集にも収録しているが、ここでは拡大版を前後編に分けて掲載(この記事は前編)。脱線し過ぎた箇所と放送禁止部分を取り除き、濃密な1万5000字に凝縮しました。どうぞお楽しみください。
※座談会・後編:日本人は「政治に興味ない」「専門的に生きている」──外国人のお笑い座談会より
(※一部の読者が不快に感じるおそれのある刺激的な表現を含みます)
パックン 日本に来て、お笑いに関して予想と違ったと思ったことは何かある?
周 日本のお笑いは、ただのお笑いですね。
チャド トゲのある言い方するね!
パックン ここに日本のお笑い芸人が2人いますからね。
周 中国だとお笑いから何かを学ぼうとする。日本では、ただばかなまねをしてればいい。
パックン いきなり深い話になりましたね。でもいいですよ、後で浅くするから。お笑いから学ぶって、例えば?
周 例えば、アンジャッシュっていう芸人がいた。
(一同爆笑)
パックン まだいます。現在形にしてください。
周 アンジャッシュの泥棒がテーマのコントがあって、それを中国人が丸ごとパクっちゃった。
パックン え? 中国人ってパクったりするの?
(一同爆笑)
周 パクるよー!
パックン 初耳だ。
周 日本だってアメリカだって、昔はパクってたでしょ。
パックン まあまあまあ。お笑いはみんなで共有するもの。
周 そのネタをテレビ番組でやって、評判もよかった。どこが違ったかというと、泥棒が最後に「天に誓ってもう悪いことはしません」と言う。そうするとみんなが笑うんですよ。
パックン へぇ。道徳的だ。
周 日本だと最後にそんなこと言うと白けてしまうよね。
パックン アメリカに置き換えると、教会の儀式で使うワインを盗んで、もう2度とやりませんと誓った後に神父さんの聖書を持って帰る、みたいな。少なくとも、癖になっているというオチがないと笑えない。
この間、金正恩(キム・ジョンウン)のモノマネで有名なハワードXに会って、香港にはモノマネがないと聞いたんですが、本当ですか。
周 モノマネ、中国にもありますよ。