最新記事

映画

「千と千尋の神隠し」中国大ヒットを支えた黄海とは? 韓国では固定ファンもいる映画宣伝のデザイナー

2019年6月27日(木)20時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

newsweek_20190627_203740.jpg

韓国の映画ポスターのデザイナー集団「プロパガンダ」のWebサイト。TOPページには6月27日から開幕した富川国際ファンタスティック映画祭の公式ポスターが掲げられている。

映画よりもポスターにファンがつく韓国のデザイナー集団

ポスターの芸術性といえば、韓国でも数年前から注目されるようになり、ポスターそのものをアート作品のように専門のアートデザイナーが手掛けることが多くなった。特に、その先駆けとなったのがデザイナー集団「プロパガンダ」だ。3人のデザイナーたちから構成されるグループで、芸術性の高い作品を発表し続けている。このプロパガンダには固定ファンも多く、「映画そのものではなく、彼らが手掛けたポスターにファンがつく」という。

プロパガンダのWebサイトに行くと彼らが作ってきたさまざまな作品を見ることができるが、日本でも特に有名な作品では、2017年9月に日本でも公開された韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』だろう。この作品はゾンビ映画だが、ゾンビよりも人間をフィーチャーさせ、一見災害パニック映画かと思わせるポスターになっている。

現在、韓国映画の80〜90%が映画撮影とは別にポスター撮影を行っている。しかし、それが出来るのはマーケティングに資金も時間もさける商業映画だけだ。低予算で作品を作っている独立映画界では、別日にポスター撮影を行うことができないため、現場で撮影中に撮ったスチール写真を元にポスター制作が行われる。しかし、スチール担当のカメラマンを雇う余裕もない場合、撮影した映画本編の動画からキャプチャーしポスターを作ることも多いという。そういう場合は、ビンテージスタイルのように加工したりさまざまなアイディアでカバーしてクオリティを下げずにポスターを作っていくのだという。

またデザイナーは、ポスターだけでなく映画全体のビジュアルデザインを請け負っていることが多く、映画タイトルのロゴやシナリオのデザインにも関わっている。映画製作会社も映画全体のイメージをデザイナーに任せ、撮影が始まる前から一緒に作り上げていく存在なのだ。

このように、韓国ではビジュアルが注目される作品が多い。「プロパガンダ」以外にも、「ピグマリオン」「ピッナヌン」などのデザイン会社は、業界以外の一般人にも注目されており、それぞれが独自のカラーを持っている。また、会社自体に一般のファンがついているのだ。日本ではなかなか無い珍しい状況といえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    日本では起こりえなかった「交渉の決裂」...言葉に宿…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中