公立校もアイビーも「ほぼ男女同数」が合格・入学する
サマーズ氏は、この「前科」が後々まで尾を引いて、2013年にはベン・バーナンキ氏の後継としてFRB 議長(連銀総裁)にあと一歩というところで、ジャネット・イエレン氏という女性候補にその座を奪われています。
このサマーズ氏とハーバードが「もたついて」いる間に、全米、全世界から優秀な理系の女子学生を集めていたのがプリンストンです。プリンストンは女性学長のリーダーシップの下で、単に女子学生の入学を5割に持っていくだけでなく、理系の各学科における男女比をほぼ50%に持っていくことに努力をして、現在では優秀な女性の理系研究者の教育機関として評価を高めているのです。
現在では、まだ男子学生がやや多いMIT、カルテック、ジョージア工科大学などの一流理系大学も必死になって「優秀な理系女子」を集めようとしています。
期待される学生像「とにかく凄い学生」
こうした要素に加えて、アメリカの特に名門大学が目を皿のようにして探しているのが「とにかく凄(すご)い学生」という概念です。
伝統の維持とか破壊とか、あるいは秀才だとか天才だというようなカテゴリとはまた別に、「非凡な人材」を確保しようというのです。
学力だけでなくスポーツや音楽の活動を重視するというのは、本章で述べてきたように「マルチタスク処理能力」を見るためですが、それに加えてスポーツや音楽などの活動を通じて「非凡な世界を経験した非凡な人材」を迎え入れたいという意志があるのです。
ハーバードはこうした「非凡な人材」を入学させることで有名です。
例えば、すでに芸能や芸術の世界で活躍しているトップクラスの人材として、女優のナタリー・ポートマン、バイオリニストの五嶋龍といった例が挙げられます。芸能とか音楽と言っても、高校の演劇部やオーケストラで活躍したというレベルではないわけです。
では、この2人の場合は、それぞれ演劇や音楽が専攻であったかというとそうではなく、ポートマンは心理学を、五嶋の場合は物理学を専攻しています。これは、すでに有名人である人間を入学させることで大学のイメージの向上を図ろうというのではなく、このような「非凡な人材」を入学させることで、研究や教育のコミュニティとしても「非凡」であること、そうした大学としての強みを維持していこうということと理解できます。
こうした戦略を取っているのは、何もハーバードだけではありません。例えば、コロンビア大学が歌手のアリシア・キーズや宇多田ヒカルを入学させたのも、少し以前になりますが、イェールが女優のジョディ・フォスターを入学させたのも同じことです。
イェールと言えば、2002年のソルトレイクシティ五輪で、女子フィギュアスケートで金メダルを取ったアメリカのサラ・ヒューズが、その後はスケートから引退してイェール大学に進学しています。彼女の場合は、履歴書のスポーツ活動の欄に「オリンピックでの金メダル」ということを書いて合格したわけです。ちなみに、専攻はアメリカ政治だそうです。