最新記事

大学

公立校もアイビーも「ほぼ男女同数」が合格・入学する

2015年12月29日(火)07時55分

 サマーズ氏は、この「前科」が後々まで尾を引いて、2013年にはベン・バーナンキ氏の後継としてFRB 議長(連銀総裁)にあと一歩というところで、ジャネット・イエレン氏という女性候補にその座を奪われています。

 このサマーズ氏とハーバードが「もたついて」いる間に、全米、全世界から優秀な理系の女子学生を集めていたのがプリンストンです。プリンストンは女性学長のリーダーシップの下で、単に女子学生の入学を5割に持っていくだけでなく、理系の各学科における男女比をほぼ50%に持っていくことに努力をして、現在では優秀な女性の理系研究者の教育機関として評価を高めているのです。

 現在では、まだ男子学生がやや多いMIT、カルテック、ジョージア工科大学などの一流理系大学も必死になって「優秀な理系女子」を集めようとしています。

期待される学生像「とにかく凄い学生」

 こうした要素に加えて、アメリカの特に名門大学が目を皿のようにして探しているのが「とにかく凄(すご)い学生」という概念です。

 伝統の維持とか破壊とか、あるいは秀才だとか天才だというようなカテゴリとはまた別に、「非凡な人材」を確保しようというのです。

 学力だけでなくスポーツや音楽の活動を重視するというのは、本章で述べてきたように「マルチタスク処理能力」を見るためですが、それに加えてスポーツや音楽などの活動を通じて「非凡な世界を経験した非凡な人材」を迎え入れたいという意志があるのです。

 ハーバードはこうした「非凡な人材」を入学させることで有名です。

 例えば、すでに芸能や芸術の世界で活躍しているトップクラスの人材として、女優のナタリー・ポートマン、バイオリニストの五嶋龍といった例が挙げられます。芸能とか音楽と言っても、高校の演劇部やオーケストラで活躍したというレベルではないわけです。

 では、この2人の場合は、それぞれ演劇や音楽が専攻であったかというとそうではなく、ポートマンは心理学を、五嶋の場合は物理学を専攻しています。これは、すでに有名人である人間を入学させることで大学のイメージの向上を図ろうというのではなく、このような「非凡な人材」を入学させることで、研究や教育のコミュニティとしても「非凡」であること、そうした大学としての強みを維持していこうということと理解できます。

 こうした戦略を取っているのは、何もハーバードだけではありません。例えば、コロンビア大学が歌手のアリシア・キーズや宇多田ヒカルを入学させたのも、少し以前になりますが、イェールが女優のジョディ・フォスターを入学させたのも同じことです。

 イェールと言えば、2002年のソルトレイクシティ五輪で、女子フィギュアスケートで金メダルを取ったアメリカのサラ・ヒューズが、その後はスケートから引退してイェール大学に進学しています。彼女の場合は、履歴書のスポーツ活動の欄に「オリンピックでの金メダル」ということを書いて合格したわけです。ちなみに、専攻はアメリカ政治だそうです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中