超高層タワー計画でパリの景観論争が再燃
ではなぜ、パリの歴史的な統一感を損なうリスクを冒してまで高いビルを建てるのか。第一に、経済的利益だ。雇用も増えるし、高いビルはテナント数が多いため、その分賃料も増える。
だが、オフィスの空室率がわずか7%のパリで、超高層タワーに対する差し迫った需要があるとは思えない。住宅不足は深刻だが、超高層以外のより良い解決策があるだろう。アイヤーズは、建物の高さや容積率を制限すれば、パリの魅力を壊さなくても人口密度を上げることはできる、と言う。
低層の住宅が立ち並んだ人口密度の高い街では、住人は互いに交流し、通りでより長い時間を過ごすようになる。それこそ、パリの特徴だ。スイスの作家で哲学者のアラン・ド・ボトンによれば、都市の建物は5階建てが理想。なぜなら、それ以上の高さだと、人は自らの存在を「矮小で取るに足りない」と思うようになる。昔から、インスピレーションを求めて芸術家や哲学者が集まってきたのは、理想の5階建て住宅のおかげなのかもしれない。
一棟の超高層タワーでパリ固有の美しさが破壊されることにはならないかもしれないが、この建設が突破口になってパリ中心部に摩天楼が出現することを批評家たちは恐れている。
トリアングルのウェブサイトはこの高層ビルをパリの「ランドマーク」と表現している。それには時期尚早だろう。高くて大量のガラスを使いさえすれば、エッフェル塔のようなパリの象徴になれると思ったら大間違いだ。