最新記事

映画

アンジーの迫力全開『マレフィセント』

邪悪な妖精を演じるアンジェリーナ・ジョリーの存在感と優れた脚本で大人も魅了

2014年7月28日(月)11時53分
デーナ・スティーブンズ

本領発揮 アンジェリーナ・ジョリーにとってマレフィセントはまさに当たり役 ©2014 Disney Enterprises, Inc.

 「この呪いは永遠に続く!」と、邪悪な妖精マレフィセントに扮したアンジェリーナ・ジョリーが赤ん坊にまじないをかける。彼女のお告げは本物だ。

 威厳に満ちたジョリーの迫力といったらない。大きな角、特殊メークでとがらせた頬骨、ネオンのように緑色に輝く瞳がなくても、呪いがかけられたことを疑う者はいないはずだ。

『眠れる森の美女』のストーリーにフェミニストの視点をちょっぴり加えたディズニー映画『マレフィセント』は、ジョリーの存在感を十二分に利用している。彼女の圧倒的なスターパワーを前に、観客まで魔法をかけられた気分になるのだ。

 見どころはジョリーだけではない。オーロラ姫を演じるエル・ファニングも素晴らしい。16歳で永遠の眠りに就くよう呪われるオーロラは甘ったるくなりがちだが、役と同じ16歳のファニングは初々しくも爽やかに好演。森の湖上を飛び回る虹色の妖精を眺める場面では、彼女の心からの喜びが伝わってくる(実際にいない妖精を相手に演技するのは大変だっただろうが)。

 妖精のほかにも、キノコの帽子をかぶった小人や青い蝶々もたくさん登場。おとぎ話には付き物とはいえ、見ているだけで楽しい。

 今どきのおとぎ話はゴシック風やレトロなSF風など、スタイリッシュでダークな味付けがされることが多いが、この映画はあえて子供が喜びそうなもので勝負している。魔法、魔女、毛皮のローブを着た王様、ベールから顔をのぞかせる貴婦人、そしてもちろん妖精だ。

 妖精たち(とこの映画)に君臨するのはマレフィセント。ただし、彼女は最初から邪悪な存在ではなかった。

女性間の愛情の複雑さ

 その昔、マレフィセントは見事な翼を持った妖精の孤児で、沼地にそびえる木の上で暮らしていた。ある日、森の中で出会った人間の少年ステファンと仲良しになり、いずれは人間界と妖精界の懸け橋になることをにおわせる。

 ところが成長したステファン(『第9地区』のシャルト・コプリー)は、マレフィセントを滅ぼそうとする悪い王に仕えている。一方のマレフィセントはやがて妖精界の支配者に。「マレフィセントを殺した者を後継者にする」という王の言葉を聞き、ステファンは幼なじみの彼女を殺そうと森に出掛けていく。だがどうしても殺すことができず、彼女を薬で眠らせて翼を切り落とす。

 目覚めたマレフィセントが自分の身に受けた残酷な仕打ちに気付き、生々しい怒りの叫び声を上げるシーンは圧巻だ。大切な翼を奪われた恐怖から、彼女が邪悪な妖精に変貌してしまうのもうなずける。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、核兵器を増強しつつ先制不使用協議を要求 米が

ワールド

ブラジル洪水の影響、数週間続く可能性 政府は支援金

ビジネス

ソロス・ファンド、第1四半期にNYCB株売却 GS

ワールド

AIとデータセンター関連の銅需要、年間20万トン増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中