最新記事

映画

セックスと愛とシングルライフ

2009年4月7日(火)16時52分
ジュリア・ベアード

風刺を求めても無駄

 30代以上の女性が「妥協」を考えはじめる一方で、10〜20代の女性たちは「自分は4人の主人公のうちで誰に似ているか」といった話題で盛り上がっている。視聴者の年齢の中央値は33歳。放映開始時から5歳下がった。

 ベネットは『SATC』を「小さな解放運動」と呼ぶ。「『SATC』はセックスの概念やイメージを覆し、恋人探しの基準を変えた。セックスをレストランでも語り合える話題にし、いろいろな男とつき合うのは悪いことじゃないと教えてくれた」

 セックスに対する人々の意識を『SATC』が変えたのは確かだ。だが、ベネットの世代は『SATC』を過大評価している。放映が始まった当時、『SATC』は20代の女性たちにセックス指南をしたわけではない。視聴者の性生活をドラマに取り入れてテレビに映し出し、もっと大胆になりなさいとけしかけただけだ。

 公然と女性の性欲を肯定したのは、『SATC』が最初ではない。往年のセックスシンボルで女優のメイ・ウエストは何十年も前に、「カタい男っていいものよ」と甘い声でつぶやいた。

 女性の多様な性欲に市民権を与えたという点では、マドンナの右に出る者はいない。92年の写真集『SEX』のマドンナに比べたら、『SATC』の4人はお行儀のいい小娘だ。

 社会変革に対する『SATC』の貢献度は、それほど大きくなかった。結婚にとらわれない恋愛や人生の意味について、キャリーは何も答えを出さなかった。答えを出すより、どうしたらいいのかと問いかけた。私たちと同じように混乱した心のうちを、そのままさらけ出した。

 だからこそ、ファンはキャリーの家を訪ねて感涙にむせぶ。心は気まぐれで、手なずけることはできないけれど、仲間がいるのは素晴らしい――このメッセージが『SATC』の「長寿」を支えているのだろう。

 理想の王子様探しへの風刺をこの作品に求めても無駄だ。『SATC』が描くのはマノロ・ブラニクのハイヒールを愛するシンデレラ、幸せ探しに夢中のヒロインなのだから。

[2008年8月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

全米50州で反トランプの大規模デモ、関税や政府縮小

ワールド

「市場が語った」と中国、米関税受けた相場急落で

ワールド

米相互関税が一部発動、一律10% 各国は協議模索

ビジネス

アングル:飲み代は上昇、雇用は減少 トランプ関税で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避し、「自爆攻撃」成功の瞬間映像をウクライナ公開
  • 4
    ユン韓国大統領がついに罷免、勝利したのは誰なのか?
  • 5
    4分の3が未知の「海の底」には何がある? NASAと仏…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    地球の自転で発電する方法が実証される──「究極のク…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中