最新記事

映画

セックスと愛とシングルライフ

2009年4月7日(火)16時52分
ジュリア・ベアード

生身の女優はより現実的

 02年、ワーク・ライフ政策センターのシルビア・アン・ヒューレット会長が、著書『ベビー・ハンガー』で女性の受胎能力は35歳をさかいに「急激に落ちる」と書き、論議を呼んだ。

 ヒューレットは、キャリーと彼女を演じた女優サラ・ジェシカ・パーカーの生き方の違いに注目すべきだと考えている。「パーカーはキャリアと家庭を両立させたいという姿勢を明確にしていた。女優としての成功と家庭の幸せの両方を求めた彼女は、結婚して子供を産んだ」

 一方、30代後半でエイダンとの結婚を迷うキャリーは、受胎能力の心配などしない。映画版で40代に入った彼女が、ミスター・ビッグとの結婚を考えるときも、出産の可能性など考えない。「現実の世界では、ありえない話だ」と、ヒューレットは言う。

『ベビー・ハンガー』が出版されたときは、理想の男を待つより受胎能力を優先すべきだという主張は論議の的になった。だが最近は、キャリーの生き方とは対照的な「妥協」派も珍しくない。

 ジャーナリストのローリ・ゴットリーブはアトランティック誌3月号に、妥協を勧めるエッセー「彼と結婚しちゃいなさい!」を発表した。「映画館で『ブラボー!』と叫ぶ癖が腹立たしいからって、彼を捨ててはだめ。口臭やセンスの悪さも我慢しましょう」

 多くを期待して結婚すれば、がっかりするのがオチだと、ゴットリーブは説く。そんな主張を聞くと、まるで50年代に逆戻りしたみたいだ。それに、失礼な話でもある。自分が「妥協」で選ばれることを想像してみればいい。

 若い世代は人生設計をもっと冷静に考えているらしい。いい例が、筆者の同僚ジェシカ・ベネット(26)だ。ベネットと同世代の女性は、子供が欲しいならタイムリミットは35歳と頭に刷り込まれている。「その一線は越えられない」とベネット。「ぎりぎりまで待ちたいけれど」

 ベネットの友人で教師のタラ・ケーン(26)は「『SATC』の影響で普通の結婚生活が牢獄に思える」と言うが、年齢のことは気にしている。「(晩婚で)子供ができない話とかをよく聞くので」

  35歳までに子供を産もうと考えている若い女性と、彼女らより年上の女性とでは、『SATC』のヒロインに対する考え方が違うはずだ。ヒロインたちは35 歳を超えても、恋愛は出たとこ勝負だった。『SATC』の人気が今も高い理由の一つはセックスの描き方だ。アナルセックスやバイブレーター、精液の味についてあっけらかんと語るドラマは画期的だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中