セックスと愛とシングルライフ
生身の女優はより現実的
02年、ワーク・ライフ政策センターのシルビア・アン・ヒューレット会長が、著書『ベビー・ハンガー』で女性の受胎能力は35歳をさかいに「急激に落ちる」と書き、論議を呼んだ。
ヒューレットは、キャリーと彼女を演じた女優サラ・ジェシカ・パーカーの生き方の違いに注目すべきだと考えている。「パーカーはキャリアと家庭を両立させたいという姿勢を明確にしていた。女優としての成功と家庭の幸せの両方を求めた彼女は、結婚して子供を産んだ」
一方、30代後半でエイダンとの結婚を迷うキャリーは、受胎能力の心配などしない。映画版で40代に入った彼女が、ミスター・ビッグとの結婚を考えるときも、出産の可能性など考えない。「現実の世界では、ありえない話だ」と、ヒューレットは言う。
『ベビー・ハンガー』が出版されたときは、理想の男を待つより受胎能力を優先すべきだという主張は論議の的になった。だが最近は、キャリーの生き方とは対照的な「妥協」派も珍しくない。
ジャーナリストのローリ・ゴットリーブはアトランティック誌3月号に、妥協を勧めるエッセー「彼と結婚しちゃいなさい!」を発表した。「映画館で『ブラボー!』と叫ぶ癖が腹立たしいからって、彼を捨ててはだめ。口臭やセンスの悪さも我慢しましょう」
多くを期待して結婚すれば、がっかりするのがオチだと、ゴットリーブは説く。そんな主張を聞くと、まるで50年代に逆戻りしたみたいだ。それに、失礼な話でもある。自分が「妥協」で選ばれることを想像してみればいい。
若い世代は人生設計をもっと冷静に考えているらしい。いい例が、筆者の同僚ジェシカ・ベネット(26)だ。ベネットと同世代の女性は、子供が欲しいならタイムリミットは35歳と頭に刷り込まれている。「その一線は越えられない」とベネット。「ぎりぎりまで待ちたいけれど」
ベネットの友人で教師のタラ・ケーン(26)は「『SATC』の影響で普通の結婚生活が牢獄に思える」と言うが、年齢のことは気にしている。「(晩婚で)子供ができない話とかをよく聞くので」
35歳までに子供を産もうと考えている若い女性と、彼女らより年上の女性とでは、『SATC』のヒロインに対する考え方が違うはずだ。ヒロインたちは35 歳を超えても、恋愛は出たとこ勝負だった。『SATC』の人気が今も高い理由の一つはセックスの描き方だ。アナルセックスやバイブレーター、精液の味についてあっけらかんと語るドラマは画期的だった。