激アツ「論破」対決には古代ギリシャの人たちも熱中...善く生きることを追究した対話の天才ソクラテス【3分だけ哲学】
ソクラテスが議論に強かったのは理由がありそうです。その秘密は、「自分から答えを言わないで、質問責めにする」という問答法を用いたことです。ソクラテスはソフィストに「善とは何か」などの質問をして、どんどん具体から抽象レベルに追い込んでいきます。
知らないということを知っている:無知の知
問答法をわかりやすい例で説明すると、次のようになります。まず、「キミ、赤って知ってる?」というような、当然誰でもわかっている質問をします。当然、相手は「そりゃ知ってるよ」と答えます。
そこで、すかさず「赤を説明してくれ」と催促します。すると必ず相手は、具体的な実例をあげます。「信号機の赤」「リンゴの赤」「バラの赤」などです。それに対して、さらにこう言います。「いや、私が聞いているのは、赤の具体的な例ではないんだ。リアルに感じているこの赤とは、何なのかを聞いているのだ」(普遍的・絶対的真理かつ抽象的な答えを求めている)。
「赤」そのものは何なのかと質問している以上、赤の本質、つまり、ありありと感じる赤そのものを別の物質の例で説明しても無駄なのです(脳とかもちだしても、残念ながらダメなのです...)。同じように、「正義とは何か」「美とは何か」「愛とは何か」など、もう何でもありです。
ソフィストは答えに行き詰まってしまいます。するとソクラテス必殺のキーワード「無知」が明らかになります。「知っていると思っていたけど、実は知らなかった」ということが。ソクラテスは「ソクラテスより賢いものはいない」というデルフォイの神託(神様のお言葉)を弟子から聞いて、「そんなはずはない」と知者であるソフィストと議論バトルをしてみたといいます。
ソフィストは知識はある(情報をたくさんもっている)けれども、その本質をわかっていない。一方のソクラテスは「自分は知らないということを知っている」(無知の知)。だから、その分だけちょっと自分が賢いのだと納得したのでした。
ところがギリシア政府は、ソクラテスが青年を惑わし、ギリシアの神以外の神を信じていたというかどで彼を裁判にかけ、死刑を言い渡したのです。この様子はプラトンの書いた『ソクラテスの弁明』に詳しいので一読をおすすめします。
富増章成(とます・あきなり)
河合塾やその他大手予備校で「日本史」「倫理」「現代社会」などを担当。中央大学文学部哲学科卒業後、上智大学神学部に学ぶ。歴史をはじめ、哲学や宗教などのわかりにくい部分を読者の実感に寄り添った、身近な視点で解きほぐすことで定評がある。
著書に『超訳 哲学者図鑑』(かんき出版)、『読破できない難解な本がわかる本』(ダイヤモンド社)、『図解でわかる! ニーチェの考え方』『図解 世界一わかりやすい キリスト教』『誰でも簡単に幸せを感じる方法はアランの「幸福論」に書いてあった』(以上、KADOKAWA)、『日本史《伝説》になった100人』(王様文庫/三笠書房)、『オッサンになる人、ならない人』(PHP研究所)、『哲学の小径―世界は謎に満ちている! 』(講談社)、『空想哲学読本』(宝島社文庫)など多数。
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