最新記事
自己啓発

悲しみ、恥、恐怖、嫌悪感、後悔...負の感情が人生に不可欠な理由と、ポジティブな「後悔」の仕方

2023年12月11日(月)06時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
悲しむ女性

写真はイメージです goffkein.pro-shotterstock

<ネガティブな感情があるからこそ人間は生き延びてきたが、その中で最も強力な感情が「後悔」。後悔は、人生をよりよくするための道具に変えることができる>

人はいわば感情のポートフォリオを持っており、感情の分散投資が重要だ。つまり、愛や誇りなどのポジティブな感情だけでは破綻してしまう。

ではネガティブな感情も必要だとして、それら――中でも最も強力な「後悔」とは、どのように付き合っていけばいいのか。

そう問い掛けるのは、世界のトップ経営思想家であるダニエル・ピンク。最新の学術研究と、ピンクが自ら実施した大規模な調査プロジェクトから分かったのは、後悔とはきわめて健全で、人生に欠かせないものであることだった。

後悔はよりよい人生を送る手助けになると説くピンクの著書は話題を呼び、世界42カ国でベストセラー入りしている。

regretbook20231206_cover175.jpg

このたび刊行された日本版『The power of regret 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)から一部を抜粋・再編集して掲載する(この記事は抜粋第3回)。

※抜粋第1回:17歳で出産、育児放棄...25歳で結婚、夫が蒸発...「後悔なんてしない」「過去は振り返らない」は間違い
※抜粋第2回:5歳の子どもは後悔しないが、7歳は後悔する...知られざる「後悔」という感情の正体とは?

◇ ◇ ◇

ネガティブな感情がもつポジティブな力

一九五〇年代前半、シカゴ大学の大学院で経済学を研究していたハリー・マーコウィッツという学生がある理論を思いついた。その理論はきわめて基本的な内容なので、いまでは当たり前に思えるかもしれないが、当時は革命的な考え方だった。その功績が評価されて、のちにノーベル経済学賞が授与されたほどだ。

その理論は「現代ポートフォリオ理論」と呼ばれるようになった。話を前に進めるために大ざっぱにまとめると、それは、「たまごをすべて同じ籠に入れてはならない」という格言を数学的に裏づけたものと言えるだろう。

マーコウィッツの理論が知られる前、多くの投資家は、ひとつかふたつの有望な株式に集中的に投資することこそ、株式市場で富を築く道だと思い込んでいた。

確かに、途轍もない利益を生む株式がときどきある。そうした銘柄を選んで投資すれば大金持ちになれる、というわけだ。この投資戦略を実践しようとすれば、いくつもクズのような株を買う羽目になる。それでも、投資とはそういうもの、投資にリスクはつきものだ、と考えられていたのである。

それに対し、マーコウィッツは、それとは異なる投資戦略を実践することにより、リスクを減らし、手堅く利益を手にできると主張した。その方法とは分散投資である。ひとつの銘柄に集中的に投資せず、いくつかの銘柄を購入するのだ。さまざまな業種の企業に投資することも重要だ。

この戦略を実践する場合、一度の投資で莫大な利益を得ることは難しいが、長い目で見れば、リスクを大幅に減らしつつ、はるかに大きな利益を上げられるというのである。あなたが投資しているインデックスファンドやETF(上場投資信託)は、マーコウィッツの現代ポートフォリオ理論に基づいた金融商品だ。

マーコウィッツの理論は非常に強力なものだが、私たちはしばしば、投資以外の場面ではこの考え方を忘れてしまう。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中