47歳の佐久間宣行が20歳の若者に「育んでほしい」と願うもの
佐久間宣行/1975年、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ(銀座 蔦屋書店にて撮影) Photo:遠藤 宏
<著書の『ずるい仕事術』も話題のテレビプロデューサー、佐久間氏に聞いた、独立のきっかけ、「見抜く目」の養い方、50歳に向けて考えていること。「社会に出て働く際にぶつかる壁は、海外でも日本でも同じ」>
テレビ東京時代に数々の人気番組を生み出し、2021年に独立したテレビプロデューサーの佐久間宣行さんは現在、47歳。
約20年間のサラリーマン生活で得たものを『ずるい仕事術』(ダイヤモンド社)にまとめてベストセラーとなったが、「僕が語っていることに近いことがいくつも書かれている。これを学生時代に読めていればよかったのに」と、ちょっと悔しさをにじませる本がある。
それがスタンフォード大学工学部教授のティナ・シーリグによる『新版 20歳のときに知っておきたかったこと――スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス ※アマゾンはこちら ※楽天ブックスはこちら)だ。
「社会に出て働く際にぶつかる壁って、海外だろうと日本だろうと同じなんだと、この本を読んで気づきました」
そう語る佐久間さんに、47歳の今と、もうすぐ50歳を迎えるこれからについて聞いた。
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給料以上の仕事をしていたら、後輩たちに怒られた
――2021年3月にテレビ東京を退社して以降、Netflixや自身のYouTubeチャンネルなど、演出の幅を広げています。独立のきっかけを教えてください。
複合的な要素はいくつかあるんですけど、まずはやっぱり、ディレクターの仕事をもうちょっと続けたかった。日本の企業風土の問題として、クリエイティブに専念しながらキャリアアップってできないんですよ。
テレビ東京は柔軟性のある組織だったんですが、現場で働きながらキャリアアップした人はこれまでにいないので、僕が制度作りをしていかないとならなかった。そうなると結局、クリエイティブに避ける時間がなくなるので、じゃあ独立しようと。
あとはNetflix はじめ、社員のままだと受けられない仕事のオファーがいくつも来たんです。今はどうやらOKらしいですけど、それはたぶん、僕が辞めたからで......。
もうひとつは、僕が『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』という映画を撮ったり、『ゴッドタン マジ歌ライブ』というイベントを武道館でやったりした際に、給料以上の報酬をもらっていなかったことがあります。
これを僕自身は会社員としての美徳と思っていたのですが、あるとき後輩たちに「佐久間さんが会社と戦ってボーナスをもらってくれないと、佐久間さんほど結果を出していない俺たちは一生主張できない。功罪ありますよ」って言われました。
よかれと思っていたことが、後輩たちのプレッシャーになっていたんですよね。実際、僕が独立して(後輩たちの)待遇が良くなったと聞いたのですが、後輩に言われるまで気付けなかった。
――『ゴッドタン』では芸人に限らず、アナウンサーやセクシー女優など、いろいろな人たちの「今までにない姿」を発掘し、光を当てました。その「人の持ち味を見抜く目」は、どのようにして養われたんですか?
それはまず、テレビ東京の番組ということが大きいですね。他の局とかぶることをすると、規模でどうしても負けてしまうんです。あとは僕がもともと小劇場やマイナー映画が好きな人間だというのも、結果的に影響していると思います。