広がる「株主優待」廃止の動き、でも米国株より日本株が優位になる可能性も
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<2022年になって、個人投資家に人気のある株主優待制度を廃止する企業が増える一方、自社株買いを実施する企業が増えている>
株主還元が変わる!
株主還元とは、企業が事業活動によって得た利益を株主に還元することをいいます。還元方法としては、増配(配当を増やすこと)や自社株買い、株主優待などがあります。
実は2022年になって、個人投資家に人気のある株主優待を廃止する動きが広がっています。オリックス<8591>のカタログギフトや日本たばこ産業(JT)<2914>の食品詰め合わせなどが最近の代表例です。
オリックスが100株以上保有する国内株主を対象に実施している優待制度は、オリックスの取引先が取り扱う日本全国の幅広い商品から選択できるため、個人投資家に好評でした。個人株主数は、この優待が導入される前の2014年3月末には約5万人でしたが、2022年3月末には約82万人にまで増えています。
しかし、2024年3月末に送付される分をもって、この株主優待を終了。今後は、配当等を通じて株主に利益を還元していく予定と発表しています。
JTも、2023年から優待制度を廃止します。2022年12月末時点で100株以上を1年以上保有している株主に自社の食料品を贈りますが、それが最後です。
■株主優待を廃止する企業が増えている理由
これまで、長期保有が見込める個人株主を増やすために、各社は株主優待の商品の選定に工夫を凝らしてきました。しかし、その恩恵を受けられない海外投資家からは「不平等だ」との声も出ていました。
そこで、株主への公平な利益還元のあり方という観点から株主優待制度を廃止し、今後は自社株買いや配当などによる利益還元を行っていく方針なのです。
また、2022年4月の東証の市場再編で、上場基準となる株主数が現在よりも緩和されたことも影響しています。東証1部に代わって誕生したプライム市場に必要な株主数は「800人以上」となり、以前の東証1部の「2,200人以上」から緩和されたのです。
つまり、これまで個人株主を確保するためのひとつの方策であった株主優待制度の必要性が薄れたのです。
増える自社株買い
株主優待制度を廃止する企業が増える一方、自社株買いを実施する企業が増えています。2022年5月25日時点で、720社以上の上場企業が自社株買いを発表しています。これは、昨年の自社株買い実施数の97%にすでに達しており、年間で最も多かった2019年(840社超)の記録を上回る勢いです。
そして、2022年4月から5月にかけての2か月間で企業が発表した2022年度の買い入れ枠は計4兆2000億円と、前年同期の約2倍となりました。日立製作所<6501>が8年ぶりに2,000億円規模の取得を決定するなど、大型の購入が目立ちます。
新型コロナウイルスの発生で落ち込んでいた業績が回復に向かい、危機の間に蓄えた資金を株主に還元する動きが出てきているのです。