仕事は与えること、それで誰かが救われている──哲学を人生に生かすための1冊
問題が生じたら、使えない思考を捨てればいい(ジョン・デユーイ)
富増氏は、トラブルが起きた場合の哲学として、プラグマティズムの哲学者、ジョン・デユーイ(1859年~1952年)の名を挙げる。
デユーイは、思考は道具であると説く。問題が生じたら、使えない思考を捨てて、新しい思考へと切り替えればいいというのだ。
一説によると、人は恐怖や不安を感じることで、思考能力が一時的に低下し、あり得ないようなミスをしてしまう。これを防止するには、恐怖や不安を保留し、明るい思考に転換すればいい。前向きに考えることで、隠れていた恩恵が見えるようになるため、一気に挽回できる。
哲学の基本原則は、すべての存在に対立物があるため、すべてが悪いということはないのである。どんな状況においても打開できる可能性はあるという。しかし、ネガティブになると、脳が悪いことだけを選択するようになり、悪循環が起こる。
また、人は忙しくしているときは、それに集中しているが、暇になった途端にあれこれと悩み始めると富増氏は言う。そのため、よくある自己啓発での、効果的な悩みの解決方法として「とにかく忙しくすること」が挙げられるのだ。
悩みに縛られずに、日々を充実させる方法として、自己啓発手帳がある。普通のスケジュール帳と異なるのは、目標設定ページがあること。全体的な大目標(ゴール)を決めて、月単位での目標をつくり、それを達成するために週に細分化して、さらにそこから1日単位の計画を組む。
大目標を立てると、それを実現しようと、脳がオートマティックにデータを集め始める。そうしたデータを常にメモしながら行動するのである。
さらに富増氏は、手帳に哲学者の思考を図解化した「哲学コーナー」をつくることを勧めている。そうすることで、哲学者の思考を元にしながら、新しい行動計画を立てることができる。
本書は4ページごとに1つの項目を立てており、興味があるページからコツコツと読んでいくだけで、人生を生き抜くための哲学思考が身につく構成となっている。
「働く気力を保つには」(マルクス)、「株か貯金か」(ケインズ)、「絶望したら」(キルケゴール)、「上機嫌でいく」(アラン)、「考えすぎをやめる」(老荘思想)......など、本書を読めば、現代を生き抜くためのヒントを賢人たちが与えてくれるだろう。
『この世界を生きる哲学大全』
富増章成 著
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