最新記事

インタビュー

「不安に耐えるか、退屈に耐えるか」ZOZOを去った田端信太郎はいま何を考えているか

2020年3月10日(火)17時25分
朴順梨(ライター)

Newsweek Japan

<リクルート、ライブドア、LINE......と渡り歩いてきたインフルエンサーの田端氏は今、「究極に距離が縮まる最新型のメディア」と考えるオンラインサロンに注力している。サロン内の最重要キーワードは「ブランド人」だ>

憎まれっ子インフルエンサーとして、大いに世に憚ってきた田端信太郎氏。実はその勢いのある言葉の原点に、トム・ピーターズ著『ブランド人になれ!』(仁平和夫・訳、CCCメディアハウス)という20年前の本があったことについては、インタビュー前編(SNSの申し子・田端信太郎、自著と同じタイトルの「元ネタ」本を熱く語る)で語ってもらった。

田端氏は今、「田端大学」というオンラインサロンを主宰している。大学と銘打ちながらも塾長を名乗り、メンバー1人1人に「ブランド人」として成長するための、厳しい教えを与えているのだ。月会費は9800円で、メンバーは現在約300人。田端氏はオンラインサロンを「究極に距離が縮まる最新型のメディア」と見ている。

新聞より雑誌、雑誌より本、本よりオンラインサロン


メディアって、人間と人間の距離を近づけるものだと思っている。ひと昔前だったら就職面接か何かで出会って、同じ新聞を購読していたりすると、急に距離が縮まったりするじゃないですか。でも新聞は数百万部の媒体だから、実はそんなには近づかない。

次に同じ本が好きだったりすると「おっ!」と親しみがわいて、「どの言葉が好きですか?」なんて話になる。面接官と「田端さんの本いいよね。読んでるきみ、採用」となったらすごく美しいですけど――僕の本じゃなくても、司馬遼太郎でもなんでもいいんですけど(笑)。

新聞より雑誌、雑誌より本と、メディアの形態が小さくなればなるほど、親近感が増すじゃないですか。だから数百人しかいないオンラインサロンって、究極に距離が縮まる最新型のメディアだと思うんです。

初対面でもお互いが田端大学の塾生だと分かると、共通の話題で盛り上がれたりして。それで人と人との距離が近づいたり、協力関係が生まれたりする。

僕からすると謎なんですけど、参加者同士の助け合い精神というか、いい意味での切磋琢磨が実際に起きています。それはひとえに、会費という踏み絵を踏んでもらってることも大きいと思いますけど(笑)。

メンバーを容赦なくどやし付ける一方で、部室と呼ばれる会員制バーでメンバーがタダ飲みできるよう、月20万円をチャージし続けている。鞭を打つばかりではなく、ちゃんと飴も用意しているが、決してサービスのつもりでやっているのではないと言う。


オンラインサロンはコンテンツだけだと差別化できないので、コンテクスト(文脈)をどう作るかが大事ではないかと思うんです。

なぜバーにチャージしたりメンバー参加の食事会を開いたりしているかというと、これは(同じくオンラインサロンを主宰している編集者)箕輪厚介の言葉なんですけど、サロンって待ち合わせ場所だから。彼が言うには僕自身は渋谷のハチ公みたいなもので、「そこに皆が集まる」ためにいるんです。

最近は僕もクアラルンプールやホーチミンなどに呼ばれて講演するんですけど、毎回現地の日本人が100人ぐらい集まるんです。だから最初は「地元の日本人会のメンバーで、全員顔見知りなのかな」と思ってたんですけど、誰もが「ホーチミンでこんなにたくさんの日本人、初めて見た」って言ってて。

普段は日本人会みたいな旧態依然とした組織とは一線を置いている人が、僕みたいなのが来る講演会には「話が合う人が来そうだから行ってみよう」と思うんでしょうね。それはうれしいことで、田端大学もメンバー同士がつながって、何かを生み出す場所にしてほしいんです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ

ワールド

トルコのロシア産ウラル原油輸入、3月は過去最高=L
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中