プレゼンでスティーブ・ジョブズから学ぶべきでない3つのこと
製品発表会でプレゼンテーションをするスティーブ・ジョブズ(2008年) Robert Galbraith-REUTERS
<スティーブ・ジョブズのプレゼンはあまりに有名だが、そのやり方は誰もが手本にできるものではない。ジョブズを真似るべきでない点について、米ノースウェスタン大学のティム・カルキンス教授が解説する>
米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のティム・カルキンス教授が、専門のマーケティング戦略ではなく、プレゼンの本を書いてアメリカでベストセラーとなっている。優秀な教え子たちがプレゼンで失敗していることを憂いたのが執筆の動機だったという。
カルキンス教授が8歳で行った初めてのプレゼン「ニワトリをどう洗うか?」(このプレゼンの顛末については、抜粋の第1回を参照)から始まる本書は、相手(聞き手)の見定め方からストーリー・構成、データの使い方、そもそもプレゼンをする必要があるのか否かということまで、プレゼンを成功させるためのコツを詳しく解説したもの。
その邦訳『ニワトリをどう洗うか? 実践・最強のプレゼンテーション理論』(CCCメディアハウス)から、ここでは「スティーブ・ジョブズから学ぶべきでないこと」を抜粋する。
※第1回:名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だった
※第2回:プレゼンは緊張したほうがいい、人前で話すのに恐怖を感じるのは当然だ
プレゼンを前にして、スティーブ・ジョブズのやり方を真似ようという気持ちになるかもしれない。「スティーブ・ジョブズがこうやっていたのだから、自分もこれでうまくいくはずだ」と。残念ながら、ジョブズのやり方は誰もが手本にできるものではない。一般的に、ジョブズを真似るべきでない点がいくつかある。
情報の一部を伏せておく
スティーブ・ジョブズは、情報の一部を最後まで出さないことも大きな特徴だった。新たなイノベーションについて説明しつつ、特に魅力的な新製品の発表を最後に残しておくことも少なくなかった。最後の最後になって「でも、もう一つあります」というわけだ。これで人々は話に引き込まれる。
あなたもプレゼンで、一番重要な情報を最後まで取っておこうと考えるかもしれない。プレゼンを締めくくる段階になって「それに、あともう一つだけあります」と言うようなやり方だ。これは禁物だ。
第一の問題点として、会議が終わる前に退席する人もいるかもしれない。現実問題として、誰もが多忙なスケジュールの中で時間をやりくりしている。その結果、ほぼ必ず終了前に席を立つ人が出てくる。
それも特に上級の幹部がそうなりやすい。つまり、プレゼンのターゲットになる人たちが特に多忙で、時間前に退席することになりやすい。大事な情報を最後まで取っておくと、最も重要な相手の耳にそれが入らないという結果になりかねない。