「囚人式」コンディショニングが、ビジネスパーソンに必要な理由
腕立て伏せは胸や腕の筋肉を使ってやるものではない
それでも、学校を卒業して以来、体をまともに動かしたことがない、あるいは、今さら筋トレで苦しみたくないなどと考える人は多いだろう。心配はいらない。先に述べたように、コンビクト・コンディショニングは体力ゼロに近くても始められるからだ。
例として、『プリズナートレーニング』に紹介されているプッシュアップ(腕立て伏せ)のやり方を見てみよう。壁に手のひらを置き、腕を曲げるウォール・プッシュアップがステップ1だ(下の写真)。
そのごく軽い負荷を利用して、肘、手首、肩をおだやかに刺激して血流をよくし、徐々に筋肉をつけていく。多くの人が思い描く腕立て伏せ(フルプッシュアップ)はステップ5。マスターステップであるステップ10は、片腕だけでやる(!)腕立て伏せになる。その気にさえなれば、筋肉の離れ業とも言えるその境地まで登っていくやり方が懇切丁寧に説明されている。
実際にやるエクササイズは計4種類だ(筋力的な条件がととのったところで、そこに、もう2種類が加わる)。しかし、数が少ないからと侮ってはならない。キャリステニクスはとてつもなく奥が深いのだ。
プッシュアップを例に取ると、腕立て伏せは胸や腕の筋肉を使ってやるものという先入観がある。ところが、キャリステニクス式のプッシュアップは、頭からつま先までの体全体を1枚の鉄板のように緊張させてやる全身運動だ。たくさんの筋肉を対象にするので、腹筋や大腿四頭筋にも筋肉がついていく。1種類でも、効率的に全身に筋肉がつくエクササイズになる。
『外伝』には「監獄式ボディビルダーになるための十戒」を記載
このトレーニング法は関節も強くしてくれる。それに特化したトレーニングを記したのが、続編となる『プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』(ポール・ウェイド著、山田雅久訳、CCCメディアハウス)だ。
その続編の中に、こんな記述がある。
関節が弱いと強くなれない。
なれたとしても、その強さは長続きしないし、
関節に痛みが堆積していくことになる。
機能性が高い強い筋肉をつくるには何年もかかるが、
関節も同じように強くしてこそ、それは本物になる。
関節を、こう動くものという摂理に則ったかたちで鍛える。使う抵抗(重量)も体重なので、無理がない。漸進的に大きくしていく負荷を使って徐々に慣らしていくので、強くなっていく筋肉システムに比例するように関節も強くなっていく。
骨密度も上がる。筋肉は、腱や靭帯を通して骨につながっている。筋肉を動かすと、腱や靭帯を通して骨が引っ張られる。すると、破骨細胞によって古い骨が除去され、骨芽細胞によって新しく健康的な骨が再生される。筋肉に負荷をかければ、骨粗しょう症になるリスクを減らすことができるのだ。