日本の若者がシリアルアントレプレナーを目指すべき理由【箕輪×正田】
起業や働き方、お金について語り合った編集者の箕輪厚介(左)とシリアルアントレプレナーの正田圭(右) Newsweek Japan
<会社の設立と売却を繰り返す「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」。ハードルが高いように思えるかもしれないが、それこそが人生の選択肢を広げる生き方だという。自身もシリアルアントレプレナーである正田圭と、日本のベンチャー界隈に詳しい編集者の箕輪厚介が語り合った(対談・前編)>
会社を設立し、売却し、さらにまた会社を設立し、売却し......ということを延々と繰り返す。それが「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」だ。
確かに終身雇用制度は崩壊し、1つの会社で定年まで勤め上げることが現実的でなくなってきた。大企業に入ってサラリーマンになるよりも、好きな仕事をやりたい、起業したい、そう考える若者も増えてきている。
しかし、苦労して立ち上げた会社を「売ったほうがいい」と言われると、戸惑う人も少なくないのではないだろうか。起業するだけでもハードルが高いのに、さらに売れだなんて......。
しかし、決して難しいことではないし、それこそが時間とお金の両方を手に入れ、人生の選択肢を広げる生き方だと、自身もシリアルアントレプレナーである正田圭氏(31歳)は言う。
15歳で最初の起業をし、ネット事業やM&A、事業再生などに従事してきた正田氏。20代で10億円の資産を作り、現在はテクノロジーを活用した金融データ解析などを提供する会社、TIGALAの代表取締役を務めている。
このたび、自分のノウハウを伝え、起業して会社を売却する「文化」をもっと日本に広めたいと『サクッと起業してサクッと売却する――就職でもなく自営業でもない新しい働き方』(CCCメディアハウス)を上梓した。おそらく日本初となるシリアルアントレプレナーシップの指南書だ。
一方、異なる立場から「若者はどんどん起業するべき」と訴えるのが、正田氏の知人であり、日本のベンチャー界隈に詳しい編集者の箕輪厚介氏(32歳)。幻冬舎に所属して単行本を作りながら、個人としてコンサルティングやプロデュースなども手掛ける新しいタイプの編集者だ。
堀江貴文『逆転の仕事論』、見城徹『たった一人の熱狂』、イケダハヤト『まだ東京で消耗してるの?』、青木真也『空気を読んではいけない』、佐藤航陽『お金2.0――新しい経済のルールと生き方』といった本を手掛けてきた彼は、「いま起業家に才能が集まっている」と断言する。
今どきサラリーマンになるなんて馬鹿げているし、起業家になるとしても会社を1つ作るだけじゃ面白くない――そう訴える2人に話を聞いた。
「会社=人生」の時代の終わり
――日本では「シリアルアントレプレナー」の認知度が低いかもしれない。
正田 確かに、昔は会社というと「自分の子供」で、売るなんてとんでもないという人が多かったと思います。今でも地方にいくと、高齢の経営者には「会社を売ったりしたら、後ろ指をさされてしまう」という人がいる。でも最近は、会社を売ることは「いいこと」で、フェイスブックで報告すれば「おめでとうございます!」とコメントが付く。この認識がもっと広まればいいと思って、この本を書きました。
実際、会社を作るのも売るのもハードルは下がっていると思いますよ。僕が最初に起業した15歳の頃は、ベンチャーキャピタルなんてなかったですし。
2017年の11月にDMM.comが(「質屋アプリ」の)CASHを買収しましたけど、できて8カ月目の会社が70億円で買収されるなんて、以前はあり得ませんでした。