期待に応えず、他人に期待しないほうがうまくいく理由
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<「期待に応えない」「他人に期待しない」「怒るより、謝る」......いま求められる新たなリーダーシップの形を、「日本一オーラのない監督」中竹竜二氏が提示する>
誰もがカリスマ的なリーダーである必要はない。リーダーシップの形は1つではなく、強い組織をつくるリーダーには誰でもなれる。そのために必要なのは「フォロワーシップ」のアプローチだ――。
そう主張するのは、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏。指導者未経験のまま早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任し、「日本一オーラのない監督」と言われながら全国大学選手権2連覇を達成。
退任後も、U20(20歳以下)日本代表監督としてワールドラグビーチャンピオンシップでトップ10入りし、企業のリーダー育成に特化したプログラムを提供するチームボックスという会社を設立するなど、多方面で活躍を続けている。
中竹氏によれば、「フォロワーシップ」とは「組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすること」。
経済が停滞し、情報拡散スピードが速まるなど産業を取り巻く環境が変化している近年、カリスマ的リーダーシップの限界が露呈し、「自ら考える部下」が求められるようになっている。「フォロワーシップ」の時代が到来しているのだ。
その「フォロワーシップ」は、どのようにすれば実践できるのか。ここでは中竹氏の新刊『【新版】リーダーシップからフォロワーシップへ――カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第2回は「第3章 スタイルの確立」より、第1回(自ら考える部下の育て方は「日本一オーラのない監督」が知っていた)の続きを。
中竹スタイル2 ■期待に応えない
誰しも、自分に期待をかけられるとうれしいもので、その期待に応えようとする。これはいわゆる本能の一種だろう。また、誰しも、他人から良い評価を得たい、褒められたい、認められたいという欲求があるため、期待には積極的に反応してしまう。また、期待に応えると、相手も喜んでくれることを知っているため、本当はできないと分かっていることであっても、誠意だけでも見せたいという気持ちから、ついついがんばってしまった経験は誰しもあるのではないだろうか。
一方で、組織のリーダーの立場であると、部下や周りの期待に反応することで、その瞬間は喜ばれるものの、その期待自体はいつの間にか膨らんでいく。最初より期待が膨らんでいくと、実はその期待に添うことで、相手を満足させるのが難しくなるという現象が起きてしまう。
リーダーが、目の前(つかの間)の感謝のために周りの期待に応えてしまうと、結局、大きな意味で部下を裏切ってしまうケースがある。
簡単な例を挙げると、私が監督就任1年目に、よく選手から「中竹さん、この練習は単調でつまらないので、清宮さんがやっていたような練習メニューをもっと取り入れてもらえませんか」と言われた時期があった。彼らも、単に私のやり方を批判しているのではなく、強くなりたいという本心から出た正直な意見だったので、期待に応えるために精一杯、準備したことがある。