日本の1人当たりGDPは先進国平均の74.6%に...財政出動と減税では日本経済は復活しない
しかし、それは商品やサービスの付加価値が向上したわけではなく、単なる利益の分配の変化にすぎません。要するに、価格と価値は同じではないという基本的な理解が欠如しています。
下請け企業への不当な圧力をなくすべきではありますが、国全体の生産性が向上しない限り、価格転嫁政策を推進しても生産性は向上しません。
「減税」は、今の日本では経済成長につながらない
減税も同じ問題を抱えています。
国民民主党や一部の野党、自民党の議員は、景気回復のために以下の施策を提案しています。
1. 国債を大量に発行して財政出動を行うべき
2. 減税を実施し、可処分所得を増やすべき
3. さまざまな公共サービスを無償化し、家計を支援すべき
これによって景気が回復し、日本経済が成長すると期待しています。
しかし、このような政策提言の背景には、古典的なケインズ経済学の考え方があります。景気が悪いときに政府が財政赤字を拡大し、経済成長率を過去の成長トレンドに戻すという発想です。
問題は、古典的なケインズ経済学は高い失業率を前提としていることです。景気が悪化すると失業率が上昇するので、対策として政府が赤字を拡大することで雇用を生み出し、失業者を減少させる。すると新たに雇用された人々の消費が増加して、経済が回復するという理論です。
簡単に言えば、人口増加時代において、新しく社会に出る人が増える分だけ、常に新しい雇用を創出しなければならない状況下での、政府の財政政策に関する経済学なのです。
一方で、政府が財政赤字を増やすと、それによって有効需要が拡大し、デフレギャップが解消され、物が売れ、企業が生産を増やすことで景気が回復すると主張する人もいます。その生産を増やすことの中身は、主に雇用を増やすことを意味します。
しかし、日本経済は人口減少のもとで人手不足に直面しています。これは、ケインズ経済学が前提としている状況とは異なります。
人手不足の状況で財政赤字を増やしても、失業者がほとんどいないため新たな雇用は生まれず、景気は回復しません。有効需要の理論も深く考えると、企業が生産を増やすためには雇用を増やす必要があるため、同じく人手不足の問題を無視した結論になっています。
教科書に書かれている単純な経済学の一般論を鵜呑みにしている野党や自民党の一部議員の見方は、単純すぎると言わざるをえません。