「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「香港離れ」が静かに進んでいる理由
しかし一部の業界関係者は、香港に対する漠然とした不安が経営判断に影響を及ぼしていると指摘する。弁護士3人によると、近年まで中国で建造され、中国の銀行が融資した船舶の契約では香港での船籍登録が義務付けられるのが一般的だった。ただ過去2年間で船主の要求により香港以外での登録も選択肢として明記される契約が出てきたという。ロイターはこの変更を独自に確認することはできなかった。
中国は軍事の近代化を進め、台湾への武力行使を否定せず、香港の国家安全保障上の重要性を強調している。ロイターが取材した業界幹部3人と弁護士2人によると、2020年7月に施行された香港国家安全維持法が海運業界のリスクを高める要因になっている。
弁護士らは、仮に香港政府が緊急時に船舶を徴用しようとしても、香港船籍の船の多くは香港から遠く離れた海域を航行しているため、実際には困難かもしれないと指摘する。しかし長年存在してきた非常時の統制権限を、「国家安全保障」というレンズを通して見なければならなくなったという。
ある弁護士は、一部の船主は愛国心から、または危機による見返りを期待して、政府からの要請を拒否しないだろうと話した。一方で別の弁護士は「そもそも要請を受ける可能性がある状況に身を置かない方がいい。国家安全保障の地図は明確に塗り替えられ、ほんの数年前には問題ではなかったことが問題になっている」と述べた。


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