最新記事
東南アジア

「70年代の日本」を彷彿...発展を謳歌する「これからの国」ベトナムで見た日本企業の存在感

Seeking Growth in Vietnam

2025年3月4日(火)11時00分
岩辺智博(本誌記者)

newsweekjp20250303103406-52ece82079663290a1d8f1e521ac8d66089a0c20.jpg

新商品開発の現地化を急ぐパナソニック。ベトナムのインテリアデザイナーの間で近年人気だという四角いタイプのスイッチ TOMOHIRO IWANABEーNEWSWEEK JAPAN

だが、彼にも警戒する存在がある。この国で急速に存在感を増している中国企業だ。「彼らはスピードと順応性にたけている」と、ルーンは言う。「学ぶのが速く、コピーするのも速い。すぐにアレンジしてしまう。顧客が高い品質を求めなければ、あっという間に形にして差し出せる」

実際に隣国フィリピンでは、かつて配線器具のシェアでパナソニックが1位だったものの、不動産不況による内需の低迷で国外に活路を求めた中国メーカーの進出により23年には3位へと転落した。

さらにこの動きを加速させる要因になりそうなのが、アメリカの動向だ。2月4日にはトランプ政権が中国に対して10%の追加関税を発動した。関税を逃れるために中国企業が生産拠点を東南アジアに移管する動きは第1次トランプ政権時にも見られたが、今回も同様の動きが起きることは間違いない。

newsweekjp20250303092300-f5805191a2a72a2ed6abe3a2e7abea7d02cb92a7.jpg

PEWVN社長の坂部(写真左)とナノコグループCEOのルーン(同右) TOMOHIRO IWANABEーNEWSWEEK JAPAN

これに日本企業はどう対抗するのか。坂部は「商品力で勝ち切っていく」と意気込む。ルーンも、ベトナム人にとって同社製品は「プレミアム」なものであり、購入できるのは「誇らしいこと」とされてきたと言う。高所得層が増え、高い生活水準へのニーズが高まっていることは、同社だけでなく多くの日本企業にとって追い風と言えるだろう。

長年にわたり浸透したブランド力と、全土に築いたネットワークから顧客の要望を吸い上げて新商品に転化する仕組みは、容易に「コピー」できるものではないはずだ。

ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米トランプ・メディア、同社株空売り巡りSECに調査

ワールド

トランプ米大統領の出生地主義見直し、最高裁が5月に

ビジネス

マツダ、米国でカナダ向け生産を一時停止 関税リスク

ビジネス

中国航空会社がボーイング機受け取り停止か、米国に戻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 7
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中