「経済」か「安保」か、日本製鉄のUSスチール買収...議論かみ合わず最終局面
大統領選が終われば
買収計画を巡っては、昨年12月の発表後すぐに全米鉄鋼労働組合(USW)が反対を表明した。上院銀行委員会のブラウン委員長(民主党)は、国家安全保障上のリスクを評価するため対米外国投資委員会(CFIUS)による審査を要求した。
さらに大統領選の共和党候補の指名争いをしていたトランプ氏が「私なら即座に阻止する」と述べると、バイデン大統領も3月、「米国内で所有・運営される企業であり続けなければならない」と言明した。
これに対し日鉄は、買収しても人員削減や工場の閉鎖はしないこと、海外から米国に鉄を輸入せずにUSスチールの国内生産を優先すること、米国内に投資をして生産を近代化し、中国勢に対抗することなどを訴え続けた。
大統領選が終われば風向きが変わると日鉄は期待していた節がある。森副会長は5月上旬の決算会見で、「大統領選挙を越えると政治性がなくなり、落ち着いた議論ができる可能性がある」と述べていた。米国内の見方も、バイデン、トランプ両氏ともに鉄鋼労働者や労組に支持を訴えていることから「政治的要因が大きく働いている」(外交問題評議会のマシュー・グッドマン氏)というのが一般的だった。