「何か私にできることはないですか」というスタンスでいる。すると、「とりあえず家に上がりなさい」と誘われて、一緒にお茶を飲みながら話す機会が増えていくんです。
こうした「斜めに入っていく」スタイルのほうが、質問して答えてもらおうとする「直角」スタイルより、リアルな話が聞けます。やがて「富川さんの取材なら答えてもいい」という方が増えていき、撮影スタッフから「上がり込みの達人」と呼ばれるようになりました。
──特に印象に残っているエピソードはありますか。
2016年に熊本地震の際に出会った八重子さんのことです。民家の被害の様子を取材していたら、避難所にいたはずの八重子さんという方が自宅に戻っていました。「お困りのことはないですか」と聞くと、入れ歯がなくて困っているというのです。家は物が散乱して足の踏み場もない状態。僕も一緒になって入れ歯を探したところ、無事発見することができた。水道が止まっていたのでペットボトルの水で汚れを洗ってからお渡しすると、八重子さんは涙を流して喜んでくれたんです。「あなたは命の恩人です」と。僕も嬉しかったですね。
八重子さんはその後お亡くなりになりましたが、彼女のご家族とは今もつながっていて、先日も連絡をとって、ご家族のお宅にお邪魔してきたばかりです。