最新記事
農業

「どれくらいの規模で野菜を自給できるか」高齢で病持ちでも畑仕事をやって学んだ農業の知的で人間的な営みの魅力

2024年11月14日(木)16時18分
森永 卓郎 (経済アナリスト、獨協大学経済学部教授)*PRESIDENT Onlineからの転載
「どれくらいの規模で野菜を自給できるか」高齢で病持ちで畑仕事をやって学んだ農業の知的で人間的な営みの魅力

Tatevosian Yana -shutterstock-

<今年4月、川勝静岡県知事が農業などと対比し、県庁職員を「知性の高い」と評した発言に非難が殺到した。しかし、森永卓郎さんの受け止めは違った。「この人は農業をやったことがない」>

経済アナリストの森永卓郎さんは2023年12月にすい臓がんのステージIVであることを公表した。「よく『がんというのは幸せな病気だ』と言われることがあるが、闘病中の今ならその意味がわかる」という──。

※本稿は、森永卓郎『がん闘病日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。


川勝平太知事の職業差別発言に思ったこと

静岡県の川勝平太知事(当時)が2024年4月1日、県庁職員への訓示のなかで次のように述べた。

「県庁というのは、別の言葉でいうと、シンクタンクです。毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとかということと違って、基本的に、皆さま方は頭脳、知性の高い方たちです」

この発言に対して、「職業差別だ」「職業に貴賎はない」といった世間からの非難が殺到し、川勝知事は発言を撤回するとともに、辞意表明を余儀なくされた。

たしかに世間の反応は当然のことなのだが、私の受け止めは違っていた。

「この人は農業をやったことがないんだな」

私はそう思ったのだ。実際にやっていれば、農業がいかに知的な仕事かということが自ずとわかるはずだからだ。

コロナ禍で取り組んだ「一人社会実験」

新型コロナウイルス感染が広がった2020年、厳しい行動制限のなかで、私も多くの仕事がキャンセルになったり、リモートワークに変わった。

そのため自由になる時間が大幅に増えた。一方、それまで毎週のように通っていた群馬県昭和村の体験農業も感染予防のために参加できなくなった。

新型コロナがいつ落ち着くのか見通しがつかない。そこで私は「一人社会実験」に取り組むことにした。

それは、どれくらいの面積の畑をやれば、家族が食べられるだけの野菜を自給できるのかということだ。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中