「どれくらいの規模で野菜を自給できるか」高齢で病持ちでも畑仕事をやって学んだ農業の知的で人間的な営みの魅力

2024年11月14日(木)16時18分
森永 卓郎 (経済アナリスト、獨協大学経済学部教授)*PRESIDENT Onlineからの転載

野菜の種類は20種類を超えた

何冊も本を読んだのだが、どこにもその答えは書いていなかった。

妻が家のすぐ近くの農家に頼み込んで、とりあえず1アール(100平米)の耕作放棄地を借りてきてくれた。それを鍬一本で耕して、土を作ることから私の一人農業が始まった。


トマト、ミニトマト、ナス、シシトウ、ピーマン、キュウリ、レタス、キャベツ、ネギ、タマネギ、ジャガイモ、サツマイモ、オオバ、スナップエンドウ、トウモロコシなど、植え付けた野菜の種類はどんどん増えていき、20種類を超えた。

そして、調子に乗った私は、スイカやイチゴ、そしてメロンにまで作物を広げていった。

1アールもあれば、家族が食べる分は十分自給できる

人間は欲深いもので、2年目からは面積を倍増して2アールの畑をやることになった。そして、3年間の経験でわかったことは、1アールもあれば、家族が食べる分は十分自給ができるということだ。それと同時に痛感したのは農業がいかに難しいかということだった。

大自然が相手だから、絶対に思うようにはならない。雨が襲い、風が襲い、病気が襲ってくる。虫や鳥や動物も襲ってくる。それらと闘うために、柔軟に作戦を変更し、作物を守っていく。

カラスとの知恵くらべが続いている

スイカの栽培を始めた初年度、収穫直前のスイカが軒並みカラスにやられた。カラスはスイカが熟れる時期を正確に判断して、収穫直前にクチバシで突いて、食べてしまったのだ。

私は、カラス対策として、スイカひとつずつにU字型の園芸支柱をクロス掛けにして、そこに網を張り、クリップで止めた。それ以降、被害は止まったのだが、翌年、またカラスにやられた。網の下から頭部を突っ込んできて、なかに入られてしまったのだ。

それ以降、どんどん進化するカラスとの知恵くらべが続いている。

そうしたさまざまな努力を重ねても、私の技術力不足もあって、予定どおり収穫に結びつけることができる確率は5割程度でしかない。

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